2019年度楽季ラインナップ発表
ニュース2019年度楽季プログラムについて
東京都交響楽団音楽監督 大野和士
私の音楽監督としての5シーズン目のプログラムには、作曲家の最後の作品、最晩年の作品が揃いました。
都響と深く結びついているマーラーという作曲家は未来の音楽の預言者でもありました。それでは彼以降、どのような新しい音楽的地平が広がっていったかを様々な形で皆様にご紹介することが私の目指す方向の一つでした。
2019年度楽季はその点で、2020年オリンピックイヤーに向けたひとつのメルクマールとも言える総括的な意味を持つことになるでしょう。
4月の定期演奏会で演奏される《交響的舞曲》はラフマニノフ最後の作。アメリカに渡って作曲家として苦労を重ねた彼の“白鳥の歌”とも言えるこの作品は、ラフマニノフ特有の叙情と不気味で瞬時にして姿を変える舞曲とが交差する、彼の行き着いたモダニズムが特徴です。
シベリウスの第6番は、最後の管弦楽作品《タピオラ》の3年前に書かれた大変ユニークな曲。ドリア調という教会旋法がどこか懐かしい趣を与え、絶えず音が漂流し、リズムがなくなるような不思議な印象を引き起こす作品。ほぼマーラーと同時代人であるシベリウスは、枯淡の境地を開いた人でした。
9月の定期では、ベルク最後の完成作であるヴァイオリン協奏曲と、ブルックナー最後の交響曲第9番をお届けします。ベルクは言うまでもなくマーラーの熱烈な信奉者であり、マーラーはブルックナーの弟子でありました(マーラー自身はブルックナーを同志と呼んでいたようですが)。
ベルクの作品も、未完のまま3楽章で終わるブルックナーの作品も辞世の句のような趣がありますが、いずれも天上的な清澄さをたたえ聴くものを遥かなる世界に誘います。
2020年3月の定期では、ショスタコーヴィチの第10番をとりあげますが、第3楽章ホルン・ソロはマーラー《大地の歌》冒頭と近似性があります。またブリテン《春の交響曲》のフィナーレは、中世のカノン「夏がやってきた」に基づくものですが、これはマーラーの第3交響曲(初演時の第1楽章は「夏が行進してくる」と題されていた)との関連があります。
そして何と言っても定期演奏会の中心となるイヴェントは、プログラムを燦然と飾る3曲のブルックナーの交響曲。アラン・ギルバート指揮で第4番《ロマンティック》、小泉和裕指揮で第7番、そして第9番。遥けき空間へこだまする響きとその後に来たる静寂を都響のサウンドでお楽しみいただけたら幸いです。
私たちのマエストロ、エリアフ・インバルは、ショスタコーヴィチの第11番《1905年》、第12番《1917年》を精力的に指揮。またしても名演が繰り広げられることでしょう。
ギルバート指揮のマーラー第6番《悲劇的》、フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮の《ダフニスとクロエ》全曲、マルク・ミンコフスキ指揮の《悲愴》など、聴き逃せないプログラムが並び、ソリストには、ピアノのニコライ・ルガンスキー、アンナ・ヴィニツカヤ、ホアキン・アチュカロ、ヴァイオリンの庄司紗矢香、ヴェロニカ・エーベルレ、ヨゼフ・シュパチェク、矢部達哉、チェロの宮田大、エドガー・モロー、トロンボーンのヨルゲン・ファン・ライエンを迎えて花を添えます。
またプロムナードコンサートでは、「五大陸音楽めぐり」と題して、様々な国の素晴らしい名曲の数々をアンドリュー・リットン、川瀬賢太郎、インバル、小泉和裕、私の指揮で。そして、三浦文彰、吉野直子、サスキア・ジョルジーニ、柳原佑介のソロで大いにお楽しみいただきたいと思っております。
2019年度楽季ラインナップ
※やむを得ない事情により、出演者・曲目等が変更になる可能性がございます。
(2018年10月10日現在)
定期演奏会Aシリーズ 東京文化会館 各回19:00開演(全8回) | |
第878回 2019年5月28日(火) 19:00開演 指揮/アンドリュー・リットン バーバー:管弦楽のためのエッセイ第2番 op.17 |
第881回 指揮/小泉和裕 ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 op.104 B.191 |
第884回 9/4定期Bと同演目 指揮/大野和士 【若杉弘没後10年記念】 |
第888回 指揮/マルク・ミンコフスキ シューマン:交響曲第4番 ニ短調 op.120(1841年初稿版) |
第890回 指揮/エリアフ・インバル チャイコフスキー:幻想曲《フランチェスカ・ダ・リミニ》op.32 |
第893回 12/8定期Cと同演目 指揮/アラン・ギルバート リスト (アダムズ編曲):悲しみのゴンドラ |
第896回 2/2都響SPと同演目 指揮/フランソワ=グザヴィエ・ロト ラモー:オペラ=バレ『優雅なインドの国々』組曲 |
第898回 指揮/大野和士 ベルク:管弦楽のための3つの作品 op.6 |
定期演奏会Bシリーズ サントリーホール 各回19:00開演(全8回) | |
第877回 指揮/大野和士 武満 徹:鳥は星形の庭に降りる(1977) |
第880回 指揮/クシシュトフ・ペンデレツキ 【日本・ポーランド国交樹立100年記念】 |
第883回 7/24定期Cと同演目 指揮/アラン・ギルバート モーツァルト:交響曲第38番 ニ長調 K.504《プラハ》 |
第885回 9/3定期Aと同演目 指揮/大野和士 【若杉弘没後10年記念】 |
第889回 指揮/小泉和裕 ワーグナー:ジークフリート牧歌 |
第894回 12/14都響SPと同演目 指揮/アラン・ギルバート マーラー:交響曲第6番 イ短調《悲劇的》 |
第895回 指揮/マーティン・ブラビンズ 【愛する人々に捧ぐ】 |
第897回 指揮/大野和士 ベルリオーズ:歌劇『ベアトリスとベネディクト』序曲 |
定期演奏会Cシリーズ 東京芸術劇場コンサートホール 各回14:00開演(全8回) | |
第876回 4/21大阪特別公演と同演目 指揮/大野和士 グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 op.16 |
第879回 指揮/アレホ・ペレス 【ディアギレフとロシア・バレエ団へのオマージュ】 |
第882回 7/25定期Bと同演目 指揮/アラン・ギルバート モーツァルト:交響曲第38番 ニ長調 K.504《プラハ》 |
第886回 指揮/大野和士 【日本・フィンランド外交関係樹立100周年記念】 |
第887回 指揮/フィリップ・フォン・シュタイネッカー 【スッペ&オッフェンバック生誕200年記念】 |
第891回 指揮/エリアフ・インバル ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 op.77 |
第892回 12/9定期Aと同演目 指揮/アラン・ギルバート リスト (アダムズ編曲):悲しみのゴンドラ |
第899回 指揮/小泉和裕 モーツァルト:歌劇『魔笛』序曲 K.620 |
プロムナードコンサート サントリーホール 各回14:00開演(全5回) | |
No.382 指揮/アンドリュー・リットン 【五大陸音楽めぐり① 「European Composers in America」】 |
No.383 指揮/川瀬賢太郎 【五大陸音楽めぐり② 「東からの風、南からの熱」】 |
No.384 指揮/エリアフ・インバル 【五大陸音楽めぐり③ 「ロシア・グレイテスト・ヒッツ」】 |
No.385 指揮/小泉和裕 【五大陸音楽めぐり④ 「音楽の世界遺産─不滅の名曲集」】 |
No.386 指揮/大野和士 【五大陸音楽めぐり⑤ 「躍動する音のドラマ」】 |
特別演奏会・その他 |
都響・八王子シリーズ 指揮/小泉和裕 チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35 |
大阪特別公演 4/20定期Cと同演目 指揮/大野和士 グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 op.16 |
都響スペシャル 12/16定期Bと同演目 指揮/アラン・ギルバート マーラー:交響曲第6番 イ短調《悲劇的》 |
都響スペシャル「第九」 指揮/レオシュ・スワロフスキー ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 op.125《合唱付》 |
都響スペシャル 2/3定期Aと同演目 指揮/フランソワ=グザヴィエ・ロト ラモー:オペラ=バレ『優雅なインドの国々』組曲 |