定期演奏会 Aシリーズ

第987回定期演奏会Aシリーズ

終了日時：2023年11月24日（金） 19:00開演（18:00開場）

場所：東京文化会館ホール案内座席表

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出演

指揮／小泉和裕
ピアノ／イノン・バルナタン

プロフィール一覧

小泉和裕　Kazuhiro KOIZUMI（終身名誉指揮者）

東京藝術大学を経てベルリン芸術大学に学ぶ。1973年カラヤン国際指揮者コンクール第1位。これまでにベルリン・フィル、ウィーン・フィル、バイエルン放送響、ミュンヘン・フィル、フランス放送フィル、ロイヤル・フィル、シカゴ響、ボストン響、デトロイト響、シンシナティ響、トロント響、モントリオール響などへ客演。新日本フィル音楽監督（1975～79）、ウィニペグ響音楽監督（1983～89）、都響指揮者（1986～89）／首席指揮者（1995～98）／首席客演指揮者（1998～2008）／レジデント・コンダクター（2008～13）、九響首席指揮者（1989～96）／音楽監督（2013～24）、日本センチュリー響首席客演指揮者（1992～95）／首席指揮者（2003～08）／音楽監督（2008～13）、仙台フィル首席客演指揮者（2006～18）、名古屋フィル音楽監督（2016～23）などを歴任。2021年12月、自身の半生をつづった『邂逅の紡ぐハーモニー』（中経マイウェイ新書）が出版された。
現在、都響終身名誉指揮者、九響終身名誉音楽監督、名古屋フィル名誉音楽監督、
神奈川フィル特別客演指揮者を務めている。

イノン・バルナタン　Inon BARNATAN（ピアノ）

「同世代のうちで最も憧れを抱かれるピアニストの一人」（ニューヨーク・タイムズ紙）と称賛されるイノン・バルナタンは、ソリストとしてのみならず、キュレーターそしてコラボレーターとしても類稀な才能を発揮している。
ニューヨーク・フィル、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、NDRエルプフィル、ロンドン・フィル、イスラエル・フィルなど世界の一流オーケストラと数多く共演。ウィグモア・ホール、カーネギー・ホールなどの主要ホールでのリサイタルに加え、室内楽にも取り組み、最近では世界的ソプラノ歌手ルネ・フレミングとも共演。
2009年エイヴリー・フィッシャー・キャリア賞、2014年シーズンより3年間、ニューヨーク・フィルハーモニックの初代アーティスト・イン・アソシエーションを務めた。CDはいずれも高く評価され、アラン・ギルバート指揮アカデミー室内管弦楽団とのベートーヴェンのピアノ協奏曲集も話題となる。
1979年テルアビブ生まれ。現在ニューヨーク在住。2019年よりカリフォルニアのラ・ホーヤ音楽協会が主催するサマーフェストの音楽監督を務めている。

曲目

チャイコフスキー：ピアノ協奏曲第1番変ロ短調 op.23

曲目解説
プロコフィエフ：交響曲第5番変ロ長調 op.100

曲目解説

チャイコフスキー：ピアノ協奏曲第1番変ロ短調 op.23

　1862年、ロシア初の本格的な音楽院であるペテルブルク音楽院がアントン・ルビンシテイン（1829～94）によって設立された。ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー（1840～93）はこの音楽院創立時に入学し、アントンの指導を受けた。1866年、今度はモスクワに音楽院が開設される。創立者はアントンの弟で名ピアニストのニコライ・ルビンシテイン（1835～81）だった。前年ペテルブルク音楽院を卒業したチャイコフスキーはこのモスクワ音楽院に教師として赴任する。ニコライは当初彼を自分の家に寄宿させるなど、新米教師・新進作曲家である彼に助力を惜しまなかった。
　ピアノ協奏曲第1番はこの恩人ニコライに捧げるべく、1874年秋に着手された。弟アナトリー（1850～1915）宛の手紙でもチャイコフスキーはこの曲をニコライに弾いてもらうために書いていることを述べている。そしてピアノ譜が大方仕上がった年末に、曲に対する意見をニコライに求めた。ニコライの返答は予想もしなかったものだった。「演奏不能の代物」「陳腐で低俗」「大部分は書き直すべき」などと罵詈雑言、さすがのチャイコフスキーも怒りを抑えきれず「一音たりとも変えない」と応酬したという。
　翌1875年初めにオーケストレーションを完成させたチャイコフスキーは、音楽院の同僚カール・クリントヴォルト（1830～1916）の助言もあって、ドイツの名ピアニストで指揮者のハンス・フォン・ビューロー（1830～94）に楽譜を贈った。「全ての点で讃嘆に値する」と絶賛したビューローは同年秋のアメリカ演奏旅行中、ボストンでこの曲を弾いて初演し大成功を収め、ニューヨークなどでもこれを演奏して好評を得る。
　ロシア初演は1875年11月にペテルブルクでなされ（独奏はＧ.クロス）、続いてモスクワ初演もなされた。モスクワ初演の独奏はセルゲイ・タネーエフ（1856～1915）だったが、指揮はなんとこの曲を酷評したニコライ・ルビンシテインが受け持った。ニコライも認識を改め、1878年にピアニストとしてこの曲をモスクワで取り上げ、さらに同年のパリ万博でも演奏している。チャイコフスキーものちに改訂に乗り出し、決定稿を作り上げたのだった。
　民族色豊かなこの作品は、協奏曲の伝統から外れた新しい様式が打ち出されている。例えば第1楽章は力強いホルンに導かれて、広がりある主題が現れる。いかにも楽章全体の第1主題と見まがうこの主題は、実は単なる序奏主題で、ただ一度ここでしか出現しない。主部との密接な主題的関連を重視する伝統的な作法とは違った独創的発想であり、当初ニコライが理解できなかったのも無理はないともいえよう。
　第1楽章　アレグロ・ノン・トロッポ・エ・モルト・マエストーソ（変ニ長調）～アレグロ・コン・スピーリト（変ロ短調）　上述の主題を持つ規模の大きな序奏が置かれる。主部はウクライナ民謡を変化させた第1主題に始まるソナタ形式だが、ラプソディー風の性格が強い。ピアノの名技とシンフォニックな響きの管弦楽の絡みが聴きものだ。
　第2楽章　アンダンティーノ・センプリーチェ　変ニ長調　ロシアの風景を映し出すようなフルートの美しい主題に始まる情感豊かな緩徐楽章。プレスティッシモに転じる中間部は、一時期チャイコフスキーが恋した歌手デジーレ・アルトー（1835～1907）が愛唱したフランスの小唄を主題とする。
　第3楽章　アレグロ・コン・フオーコ　変ロ短調　ウクライナ民謡に基づく民俗舞曲風の主題を持ったロンドで、ピアノの技巧性を生かしつつ圧倒的な高揚を作り出していく。
（寺西基之）

作曲年代	1874～75年　改訂／1879年、1888～89年
初　　演	1875年10月25日（ロシア旧暦13日）　ボストンハンス・フォン・ビューロー独奏
楽器編成	フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、弦楽5部、独奏ピアノ

プロコフィエフ：交響曲第5番変ロ長調 op.100

　1918年以降西欧で活動していた時期に3曲の斬新な交響曲（第2～4番）を生み出したセルゲイ・プロコフィエフ（1891～1953）だが、1930年代半ばにソヴィエト体制の母国に復帰後はしばらく交響曲から離れ、主に舞台作品や声楽作品などに力を入れる。ソ連では社会主義リアリズムの文化政策が打ち出されており、彼は自分の個性をそうした路線の中でいかに生かしていくか探る必要があった。そうした時期においては、絶対音楽の中でも最も構成的なジャンルの交響曲よりも、具体的な題材に基づく舞台作品や声楽曲のほうが、ソ連で作曲家として認められるための自己アピールがしやすかったのかもしれない。
　プロコフィエフが交響曲の作曲を決意するのは、帰国後約10年もたった1944年のことだった。《戦争ソナタ》と呼ばれるピアノ・ソナタ3部作の最後であるソナタ第8番を完成した年で、第2次世界大戦（1939～45）の終結への光が見え始める中で偉大な仕事に取り組もうという思いで交響曲に着手したという。こうして生み出された第5交響曲は、帰国後様々なジャンルで培ってきた彼の書法を伝統的な4楽章構成の交響曲の形の中に見事に融け込ませた傑作として結実した。
　作曲者自身によれば「自由で幸福な人間とその強大な力、その純粋で高貴な精神」を表現したというこの交響曲は、たしかに全体に叙情的な明るさが支配的だが、その中にシニカルな諧謔性、不気味な緊張感が複雑に交錯する。戦時の厳しい状況を経験した一方で、スターリン独裁の怖さも作曲家として身にしみて感じるようになっていたプロコフィエフが、久々に手掛ける交響曲でどのような思いを表現しようとしたのか、この作品にはいろいろな解釈が可能だろう。
　初演は1945年1月13日にモスクワ音楽院大ホールでなされた。指揮は作曲者自身で、演奏が開始される直前に対ドイツの戦闘勝利の祝砲が鳴り響き、それが終わったところでタクトが振りおろされたという。その模様はソヴィエト各地に中継放送された。
　第1楽章　アンダンテ　変ロ長調　ソナタ形式　2つの主要主題はいずれも伸びやかな叙情的性格を持つ。低弦による主調の第1主題で始まる展開部は既出の楽想を活用しつつ次第に盛り上がっていき、その頂点で金管に第1主題が現れて再現部へ入る。打楽器群を活用した終結は壮大だ。
　第2楽章　アレグロ・マルカート　ニ短調　軽妙かつシニカルなスケルツォ楽章。中間部はバレエ音楽を思わせる。主部再現は機関車の発進のように加速度的に始まり、第1部より厚みを増しつつ興奮を高める。
　第3楽章　アダージョ　ヘ長調　深い情趣を湛えた緩徐楽章で、主部では息の長い旋律が切々と歌われる。中間部は深い陰りを持ち、やがて悲劇的な頂点を築く。
　第4楽章　アレグロ・ジョコーソ　変ロ長調　第1楽章第1主題が回想される牧歌的な序奏の後、クラリネットが示す軽やかな主題を中心に幾つかの主題や楽想を挟みつつロンド風に明るく発展する。最後は祝典的で賑やかなコーダに至るが、その中に鋭い威嚇するような響きが入り混じるのが意味深長だ。
（寺西基之）

作曲年代	1944年
初　　演	1945年1月13日　モスクワ　作曲者指揮
楽器編成	ピッコロ、フルート2、オーボエ2、イングリッシュホルン、小クラリネット、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、大太鼓、シンバル、小太鼓、トライアングル、タンブリン、ウッドブロック、タムタム、ハープ、ピアノ、弦楽5部

【当日券情報】第987回定期演奏会Aシリーズ（11/22up）
都響主催公演では、都響WEBチケットで当日券を販売いたします。
　【販売時間】
公演当日10:00～開演時間の30分前まで。　※無くなり次第終了
　【販売席】
全席種販売予定
　【販売方法】
都響WEBチケット（座席選択可）
　【受取・支払方法】
①セブンイレブンで発券
　・セブンイレブンでお支払い（クレジットカード、現金でお支払いただけます）
　・都響会員割引がご利用いただけます。　
※会場近くにセブンイレブンが無い場合もございます。事前にご確認の上、ご来場く
ださい。（東京文化会館とサントリーホールは近くにございません）
②電子チケット（スマートフォンとLINEアプリが必要です）
　・クレジットカードでオンライン決済
　・都響会員割引・U-25割引がご利用いただけます。

なお、WEB当日券に余裕がある場合にのみ、会場でも販売いたします。
会場販売では、
・開場時間から販売いたします。※会場販売分の販売枚数が無くなり次第終了。
・座席ランクは選べますが、座席の場所はお選びいただけません。
・お支払はクレジットカード、交通系IC、QRコード決済でお願いします。現金はご利用いただけません。
・U-25割引がご利用いただけます。

※東京文化会館大ホールには、エレベーター、エスカレーターはございません。予めご了承ください。

聴きどころ

小泉和裕によるロシア音楽傑作選です。小泉自身都響では25年ぶりに指揮するプロコフィエフ第5交響曲。この恐るべき名曲の重量感と機能美を最大限に引き出す円熟の指揮にご期待ください。前半に置かれたチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番の独奏には、すでに都響定期ではおなじみの名ピアニスト、イノン・バルナタンを迎えます。