都響スペシャル2021（3/25） │ 東京都交響楽団

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出演

指揮／下野竜也

下野竜也　Tatsuya SHIMONO（指揮）

NHK交響楽団正指揮者、札幌交響楽団首席客演指揮者、広島ウインドオーケストラ音楽監督、広島交響楽団桂冠指揮者。
鹿児島生まれ。2000年東京国際音楽コンクール、2001年ブザンソン国際指揮者コンクール優勝。NHK交響楽団、東京都交響楽団をはじめ国内の主要オーケストラの定期演奏会に招かれる一方、ローマ・サンタ・チェチーリア国立アカデミー管、チェコ・フィル、バルセロナ響をはじめとした国際舞台でも活躍。オペラにおいても新国立劇場、二期会、日生劇場をはじめ注目の公演で指揮を務めている。
これまでに読売日本交響楽団正指揮者、同首席客演指揮者、京都市交響楽団常任首席客演指揮者、広島交響楽団音楽総監督を歴任。
東京藝術大学、東京音楽大学にて後進の指導にもあたる。
齋藤秀雄メモリアル基金賞、芸術選奨文部科学大臣賞、東燃ゼネラル音楽賞奨励賞、有馬賞、広島市民賞、中国文化賞など受賞多数。
NHK大河ドラマテーマ曲収録（25年放送開始の最新作「べらぼう」を含む7作品）、NHKFM「吹奏楽のひびき」パーソナリティを務めるなど、放送においても活躍している。

公式ホームページ　http://www.tatsuyashimono.com/

写真：©Nanako Ito

曲目

ドビュッシー：交響組曲《春》

曲目解説
ブルックナー（スクロヴァチェフスキ編曲）：アダージョ（弦楽五重奏曲ヘ長調 WAB112より第3楽章）

曲目解説
ブラームス：交響曲第1番ハ短調 op.68

曲目解説

　1884年、クロード・ドビュッシー（1862～1918）は、カンタータ《放蕩息子》によって、当時、若手芸術家の登竜門であったローマ賞の大賞を受賞する。この賞の受賞者はローマへ留学することになっていたので、彼は1885年1月、ローマへ赴き、メディチ荘での生活を始めた。しかし、ドビュッシーは留学生活が性に合わなかったようで、他の寄宿生たちともあまり交流せず、結局予定の3年を2年に短縮し、パリへ帰ることになる。
　さて、大賞受賞者には、留学の成果を示す作品を制作し、アカデミーに送ることが義務づけられていた。《春》は、合唱とオーケストラのための交響的頌歌《ズュレイマ》（散逸）に続く2作目で、サンドロ・ボッティチェッリ（1445頃～1510）の名画『春（プリマヴェーラ）』、そして、それを下敷きにして、同じくローマ賞大賞受賞者だった画家マルセル・バシェ（1862～1941／ドビュッシーの肖像画を残している）が描いた絵を見たのが作曲のきっかけだった。
　ドビュッシーは《春》について、友人への手紙で次のように書いている。「私は、特別な色彩で、感覚の大きな範囲を覆う作品を書くことを構想しています。それは《春》という題名になりますが、描写的ではなく、人間的なものです。表現しようとしたのは、自然における生物や事物たちの、ゆっくりとした苦しい誕生、次にそれらが次第に花開き、最後に新しい生命として再生する輝かしい喜びです。プログラムはありません。私は手わたされたテキストをなぞるような音楽はきらいです。だから、この音楽がいかに喚起力に富んだものでなければならないかがお分かりになるでしょう。望むようなものができるかどうかは分かりません」
　彼は1886年に着手し、1887年2月に完成させた。もともとの編成は、歌詞のない合唱、2台ピアノ、管弦楽というものだったが、スコアは製本所の火事で失われてしまい（伝記作者フランソワ・ルシュールのように、管弦楽化が間に合わなかったドビュッシーの作り話とする見方もある）、アカデミーへは、合唱とピアノ連弾という編成の楽譜で提出された。
　芸術アカデミーの保守的な審査員たちからは、この曲に対し、多くの批判が出た。特に、アカデミーの書記であった画家アンリ・ドゥラボルド（1811～99）の評言はよく知られている。彼は、この作品が形式の正確さを軽視し、色彩を強調しすぎていると批判し、「芸術作品における真実のもっとも危険な敵のひとつである、このあいまいな『印象主義』に警戒することが強く望まれる」と書いた。これは、ドビュッシーに対し「印象主義」という言葉が使われた最初の例だ。
　その後、1912年になって、合唱とピアノ連弾のための楽譜から、作曲家・指揮者のアンリ・ビュッセル（1872～1973）が、ドビュッシーの監修のもと、あらためてオーケストレーションを行う。このとき、原曲の合唱パートは管弦楽に割り当てられた。なお、ビュッセルはドビュッシーの友人で、ほかに《小組曲》のオーケストレーションも手がけている。
　第1楽章　トレ・モデレ（非常に控えめに）　おおむね「A―B―A―B」の構成から成る。冒頭で、フルート独奏とピアノがペンタトニックな音型を提示し、弱音器を付けたヴァイオリンがそれに応える（A）。このやりとりが繰り返されたあと、やがてアンダンテ・モルト・エスプレッシーヴォの指示があり、冒頭の音型と似たリズムをもつ甘美な旋律を第1ヴァイオリンが歌う（B）。その後は、これらの素材が組み合わされ、自由に変奏されていく。
　第2楽章　モデレ（控えめに）　「A―B―A―A&B」の構成。ヴァイオリンのトレモロなどを背景に、木管とピアノが東洋的な主題を提示すると、ホルンの信号がそれに応える（A）。第1楽章の主題群もまじえてひとしきり高揚したあと、小太鼓の連打に導かれて、軽快な行進曲風の音楽が始まる。ここには「あまり速くなく、とてもリズミカルに」という指示がある（B）。以後、第1楽章を含め、これまでに登場した主題群が加わって進み、輝かしいクライマックスで全曲を閉じる。
（増田良介）

作曲年代	合唱、2台ピアノと管弦楽版／1886年～1887年2月管弦楽編曲／1912年
初　　演	管弦楽版／1913年4月18日　パリ　ルネ・バトン指揮
楽器編成	フルート2（第2はピッコロ持替）、オーボエ2（第2はイングリッシュホルン持替）、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、トライアングル、小太鼓、シンバル、ハープ、ピアノ（連弾）、弦楽5部

　生涯の幅広い時期にわたってコンスタントに室内楽曲を書き続けたヨハネス・ブラームス（1833～97）とは異なり、アントン・ブルックナー（1824～96）は、この分野にはほとんど作品を遺さなかった。弦楽四重奏曲ハ短調 WAB111（1862年）などの習作はあるものの、作曲家が本格的に取り組んだ多楽章形式の室内楽作品は、弦楽四重奏にヴィオラを1本加えた編成で書かれた弦楽五重奏曲ヘ長調 WAB112を数えるのみである。
　弦楽五重奏曲作曲のきっかけをもたらしたのは、ヨーゼフ・ヘルメスベルガー（1828～93）だった。ヘルメスベルガーはウィーン楽友協会の芸術監督やウィーン音楽院院長などの要職を歴任した人物であり、当地随一と目されていた弦楽四重奏団を主宰するヴァイオリンの名手でもあった。ブルックナーの弦楽五重奏曲は、このヘルメスベルガーからの再三の要請に応じるかたちで、交響曲第5番と第6番の間の時期、1878年12月から翌年7月12日にかけて作曲された（その後1879年12月21日にはスケルツォ楽章の代替作として書かれた「インテルメッツォ」WAB113が完成、1881年11月には第4楽章が改訂される）。
　それにもかかわらず、ヘルメスベルガーはなかなか本作品を演奏しようとしなかった。そのため、第1楽章から第3楽章については、1881年11月17日に、作曲家の弟子フランツ・シャルク（1863～1931）らによって非公開で初演された。ヘルメスベルガーらがようやく全曲を公開初演したのは、さらに3年ほど後の1885年1月8日のことである。
　全4楽章のうち、本日演奏される第3楽章（アダージョ、変ト長調、4分の4拍子）は穏やかな抒情美に満ちた緩徐楽章。冒頭から表情豊かに奏でられる息の長い主題（A）と、ヘ音が反復される中でヴィオラがのびやかに歌う主題（B）を中心とした「A―B―Aʼ―Bʼ―Aʼʼ」の5部分形式で作曲されている。
ポーランド出身の指揮者・作曲家スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ（1923～2017）による弦楽合奏編曲は、基本的には原曲に忠実である。しかしながら、例えば上記B 部分冒頭で、本来は第1ヴァイオリンと第2ヴィオラに割り振られていたヘ音の同音反復を第1ヴァイオリンの分奏とし、B主題をヴィオラ両パートのユニゾンでしっかりと聴かせるなど、響きのバランスに配慮した細かな工夫は要所要所に施されている。ブルックナーの緩徐楽章の魅力を余すところなく堪能させてくれる、じつに美しい編曲作品である。
（本田裕暉）

作曲年代	1878年12月～1879年7月12日　第4楽章改訂／1881年11月　編曲版／1998年
初　　演	非公開（第1～3楽章）／1881年11月17日　ウィーン公開（全曲）／1885年1月8日　ウィーン
楽器編成	編曲版／ヴァイオリン2部、ヴィオラ2部、チェロ、コントラバス

　1853年秋、当時まだ20歳の無名の作曲家ヨハネス・ブラームス（1833～97）はデュッセルドルフのロベルト・シューマン（1810～56）のもとを訪れた。シューマンはブラームスの才能に驚嘆し、久々に評論の筆を執って彼を音楽の“逞しい闘争者” として称賛、「新しい道」と題されたこの評論によって、ブラームスは一躍名を知られることになる。
　言うまでもなくシューマンはロマン主義的な音楽を追求した作曲家だが、一方でルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン（1770～1827）以来の伝統を重視し、フランツ・リスト（1811～86）やリヒャルト・ワーグナー（1813～83）らの革新的な動きに懐疑的だった。だからロマン的精神を伝統様式のうちに打ち出したブラームスの音楽は、シューマンの目にはドイツ的伝統を理想的に継承発展させるものと映ったのである。
　自身ベートーヴェンを崇敬していたブラームスにとって、シューマンの賛辞は光栄であるとともに大変な重荷にもなった。生来の自己批判的な性格もあって、彼はベートーヴェンを継ぐジャンルとして最も重要な交響曲の作曲に慎重にならざるを得なくなり、シューマンの薫陶を受けて間もない1855年前後に最初の交響曲を構想するも、それが結実するのは実に約20年後、1876年のこととなる（第2楽章は初演後に大幅改訂）。
　こうして出来上がった作品は、長年の苦心の甲斐あって、劇的な闘争から輝かしい勝利へ至る全体の構図、徹底した主題展開法による緊密な構築性といった点でベートーヴェンの伝統を継承した作風を示している。
　その一方、そこに故シューマンの妻クララ（1819～96）に対する想いも重ね合わせられていることが、クララClaraの音名象徴「C−A−A（ハ−イ−イ）」を様々な旋律動機の中に織り込んでいることや、終楽章の暗い序奏の最後に突如霧が晴れるかのように現れるホルンの旋律がクララの誕生日にブラームスが贈った歌の引用（旋律自体はブラームスのオリジナルでなく彼がアルプスで耳にしたもの）であることなどに示唆されている。
　ベートーヴェンの古典的伝統を受け継ぎつつも、そうした個人的な愛の表現を秘かに織り込んでいるところに、19世紀後半の作曲家としてのブラームスのロマン派的側面が窺えよう。
　第1楽章　ウン・ポーコ・ソステヌート～アレグロ　ハ短調　緊迫した序奏に始まり、主部も緊張感に満ちた闘争的な展開が繰り広げられる。
　第2楽章　アンダンテ・ソステヌート　ホ長調　豊かな叙情とロマン性に満ちた3部形式の緩徐楽章で、最後の部分では独奏ヴァイオリンとホルンが愛の語らいのようなデュエットを奏でる。
　第3楽章　ウン・ポーコ・アレグレット・エ・グラツィオーソ　変イ長調　穏やかな間奏風の楽章。
　第4楽章　アダージョ～ピウ・アンダンテ～アレグロ・ノン・トロッポ・マ・コン・ブリオ　ハ短調～ハ長調　緊迫感漂う序奏に始まり、やがて前述のホルンの旋律と荘重なコラールが奏された後、ふっきれたかのような明朗な第1主題が示されて晴れやかな発展をみせていく。
（寺西基之）

作曲年代	1874～76年（構想は1850年代半ばから）
初　　演	1876年11月4日　カールスルーエオットー・デッソフ指揮　カールスルーエ宮廷管弦楽団
楽器編成	フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、弦楽5部

※本公演は18時開演です。
【当日券情報】都響スペシャル2021（3/25）（3/24up）
都響スペシャル2021（3/25）は感染症の拡大防止のため、都響WEBチケットにて当日券を発売いたします。
会場での対面販売、及び都響ガイドでの電話販売は行っておりませんのでご了承ください。

販売日時：3/25（木）10:00～17:00　無くなり次第終了
販売方法：都響WEBチケット（セブンイレブン支払・発券のみ）
※お申込みには、都響WEBチケットへの事前登録が必要です（登録無料）。
※S、A、B、C、Ex席を販売予定。
※当日券はシルバー割引・U-25割引・ハンディキャップ割引はございません。
　割引をご希望の方は前売りにてお求めください。
※入場者数は客席の50%を上限とし、左右どちらかの席が空席となります。
※「来場されるお客様へのご案内」の内容に同意いただいた上でお申込みください。
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※東京文化会館大ホールには、エレベーター、エスカレーターはございません。予めご了承ください。

※本公演は都響スペシャルです。定期演奏会Aシリーズではございません。
定期演奏会Aシリーズのチケットではご入場いただけませんので、ご注意ください。
・基礎疾患（糖尿病・心不全・呼吸器疾患等）をお持ちの方や体調に不安のある方は、医師の判断や関係機関の情報をご確認の上、慎重なご判断をお願いいたします。当面の間、当日券は必ず販売いたします。外出や体調に不安のある方は当日券（都響WEBチケットのみ）をご検討ください。
・必ず、「来場されるお客様へのご案内」の内容に同意いただいた上でお申込みください。
・急遽出演者や曲目変更、または公演中止となる場合がございます。公演中止の場合を除き、払い戻しはいたしません。
但し、急な体調不良・発熱等の理由でご来場いただけなくなった場合は、期間内に下記フォームよりご連絡ください。購入者へチケット代金の払い戻しをいたします。連絡が無い場合の欠席については、払い戻しいたしかねます。（払い戻しには、半券が切り取られていない状態のチケットが必須となります）。
［払い戻しフォーム］https://www.tmso.or.jp/j/henkin/（公演当日10：00～開演1時間前）
※お電話の場合、公演当日、都響ガイド（0570-056-057）にて払い戻し専用の電話番号をお知らせいたします。

医療関係者を主催公演へご招待－「ブルーチケット」

新型コロナウイルス感染症対策で日夜奮闘する、医療機関に務めている皆様に感謝の意を表し、都内の医療関係者およびそのご家族を都響の主催公演へご招待いたします【各公演10席／抽選】。
「ブルーチケット」の詳細はこちらをご覧ください。

※「ブルーチケット」は「MAKE IT BLUE JAPAN実行委員会」の活動と連携しています。https://www.makeitbluejp.com/

聴きどころ

日本を代表する指揮者の一人である下野竜也が贈る、変化に富んだシンフォニーコンサートです。季節にふさわしく、ドビュッシーの《春》で華やかに幕を開け、下野愛着のレパートリーであるブルックナーの美しい弦楽合奏曲が会場をしっとりと包み、ブラームス第1交響曲の希望の讃歌がコンサートを、そして都響55周年シーズンを堂々と締めくくります。

都響スペシャル2021（3/25）

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