谷口哲朗

第2ヴァイオリン

谷口哲朗 (たにぐちてつろう) Tetsuro TANIGUCHI

(1982年9月1日入団)

 京都市立芸術大学在学中に関西フィルハーモニー交響楽団と協演し好評を得る。1982年リサイタル試験の単位を取得後、同大学を首席で卒業、同時に京都音楽協会賞を受賞。同年9月に東京都交響楽団に入団。2003年にはゲルハルト・ボッセ指揮、小田原室内合奏団とハイドンの協奏曲を協演。田村隆至、岸辺百百雄、中西和代の各氏に師事。

私の音楽はじめて物語

発表会で(5歳ころ)
発表会で(5歳ころ)
 ヴァイオリンを始めたのは4歳の時です。父が音楽好きで、子どもに何か楽器をやらせたい、と。「何をやりたい?」と聞かれて、私がヴァイオリンを選んだらしい。自分では憶えていないのですが。
 近所に教えにいらしていた田村隆至(たかし)先生に習いました。田村先生は京都大学出身で、京都市交響楽団で数年弾いた後、教えることを始めたというユニークな方。高校までずっと教えていただき、優しく導いてくださった感じです。
 とはいえ私は良い生徒ではなく(笑)、発表会も苦手でした。ただ発表会では1人ずつ弾いた後、ヴァイオリンだけでしたが合奏する機会があり、これは楽しかった。また、そのころ京都で子どもたちによる弦楽合奏団が編成された(毎日新聞など主催)ので、小4から小6ころまで参加しました。低音が加わった豊かな響きに惹かれましたね。その合奏団で一度だけ、近衛秀麿さんが指揮をされたことがありました。当時の自分にはどれだけ偉い人か分かりませんでしたが、指揮に躍動感があって、音楽を導き出されるような感覚だったのを憶えています。
 中学では天文写真の撮影に夢中になりましたが、ヴァイオリンは一応、毎日弾いていました。高校は地元の普通科へ。
 高1の時にパールマンが弾いたパガニーニ《カプリース》(全曲)のレコードを聴いて、衝撃を受けました。ヴァイオリンってこんなに凄いことができるのかと。そんな衝撃もあり、他にもいろいろな曲や演奏家を聴くのが楽しくなってきましたし、合奏の楽しさも忘れられなくて、音大受験を決めたのは高2のはじめころ。それからは毎日、真面目に練習しました。同じく高2からアマチュアの京都市民管弦楽団に入り、管楽器も揃ったフル・オーケストラを初めて体験しました。最初に弾いたのはブラームスの交響曲第2番です。
 無事、京都市立芸大に入り、音楽仲間ができたことは嬉しかったですね。高校までは音楽をやる友だちが周囲にいなかったので。オーケストラの授業が週2~3回あって、これも本当に楽しかった。大学1~3年で中西和代先生に楽器の響かせ方を改めて鍛えられ、4年の時に岸邊百百雄先生に師事して、音楽的に大きな影響を受けました。
大学を卒業した年の4月、岸邊先生から都響のオーディションの情報をいただいたのですが、東京は馴染みのない土地でしたし、正直なところ行くのが怖かった(笑)。でもせっかくの機会なので受けることに。オーディションは7月で、東京へ来たのは人生初の体験でした。
 幸いなことに合格、当時は試用期間もなく、1982年9月1日付で入団しました。若杉弘さんのマーラー連続演奏会はもちろん、R.シュトラウスなど大編成の曲をたくさん体験できて良かったと思います。宇宙への興味もそうですが、私は巨大なものが好きなので。
弦楽器奏者は職人みたいなもので、今後もオケの一員として、最高の素材(音楽)を提供していきたい。まだまだ上手になりたいですし、謙虚に弾き続けたいと思います。

(『月刊都響』2013年10月号 取材・文/友部衆樹)

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