楽員紹介 - 都響について
ファゴット
向後崇雄 (こうごたかお) Takao KOGO
(2007年12月1日入団)
埼玉県さいたま市出身。17歳よりファゴットを始める。武蔵野音楽大学ならびにケルン音楽大学卒業。ライン・ドイツ・オペラ(デュッセルドルフ)研修生を経て、東京都交響楽団に入団する。これまでにファゴットを岡崎耕治、故ゲオルク・クリュッチュの各氏に、ピリオド楽器をヴォルフガング・ダイ氏に師事。ピリオド楽器で演奏するオーケストラ・リベラ・クラシカ、バッハ・コレギウム ・ジャパンのメンバーとしても活動する他、ミニマルミュージック演奏の久石譲氏率いるフューチャーバンドメンバーとしても活動する。
私の音楽はじめて物語
中学では、吹奏楽部に興味はありましたけれど、運動部に入りたくてテニス部へ。
地元の普通高校へ進んだ時に、何か楽器ができた方が楽しいだろうな、と吹奏楽部へ行くと、当時から体格が良かったので、顧問の先生が「君はテューバだね」と。木管楽器の方がメロディックなイメージがあったので、一応ファゴットやサックスも希望したんですが、もう問答無用状態。
それで1年間テューバを吹きました。やがて仲良くなった同級生のコントラバス弾きが大のクラシック・ファン。一緒に東京文化会館の演奏会のキャンセル待ちに並んだり、CDを買いあさったりしていました。2年生になると、テューバにも後輩が入ってきた。ファゴットは楽器がまだ空いていたので、「やります!」と言ってファゴットに移りました。
ところが先輩がいないので、楽器の組み立て方も分からない。教則本を買ってきて、恐る恐る組み立てるところから始めました。でも何か運命的な出会いを感じたんでしょうね。「これでオーケストラをやりたい」「音楽の道へ進みたい」と思ってしまった。若気の至りって怖い(笑)。高校に入るまでは、音楽家になりたい、とはこれっぽっちも考えていなかったですから。
顧問の先生に岡崎耕治先生(元N響首席ファゴット奏者)を紹介していただいて、高2の7月ころからレッスンを受け始めました。岡崎先生は、音大受験生なら当然ピアノやソルフェージュをやっているはずと思っていたらしくて、「ピアノは?」と聞かれて「全然弾けません」と答えたら、ものすごく怒られた(笑)。それで、奥様の岡崎悦子先生にハノンやチェルニー30番から見ていただきました。
家にピアノがなかったので、早起きして部室でピアノを弾いて、放課後はファゴットを練習して、夜は楽典の勉強。高校生活後半はそれ一色でした。
運良く浪人せずに武蔵野音大へ入り、卒業後ケルン音大へ留学。ライン・ドイツ歌劇場管弦楽団へ研修生として入団、2年契約の途中で都響に指名オーディションをしていただき、2007年暮れに入団……と怒濤の日々でした。
今でも怒濤の中にいる感じです。都響は響きが非常に繊細で、楽団員の音楽に対するモチベーションがとても高い。今後さらに一丸となって、世界へ発信していけたらな、と思っています。
(『月刊都響』2012年6月号 取材・文/友部衆樹)