楽員紹介 - 都響について
ヴィオラ
林 康夫 (はやしやすお) Yasuo HAYASHI
(1993年4月1日入団)
福岡市生まれ。6歳よりヴァイオリンを始め る。全日本学生音楽コンクール西部地区高校 の部第2位。ヴィオラに転向後、東京藝術大 学卒業、同大学院修了。1992年都響に入団。 これまでにヴァイオリンを太期晴子、岸邊百百 雄、原田幸一郎、ヴィオラを菅沼準二、玉置 勝彦の各氏に師事。 現在はオーケストラだけ でなく、室内楽やアマチュア・オーケストラの トレーナーなど活躍の場を広げている。
私の音楽はじめて物語
最初に就いたのは太期晴子先生で、小6までお世話になりました。自分はあまり熱心な生徒ではなかったのですが、ヴァイオリンをイヤになった記憶もなくて、うまく続けさせてくださった気がします。練習は苦手でしたけれど、音楽を聴くのは大好きで、小学生の時から母と一緒に九州交響楽団の定期会員になって、コンサートへ行っていました(寝ていることが多かったみたいですが/笑)。
また、ソニーのサンプル盤レコードが家にあって、それには《運命》《第九》《巨人》《新世界》など名曲の格好良いところが1分ずつくらい入っていて、カセットにダビングして寝る時に毎晩聴いていました。音楽の原体験は、このサンプル盤と九響だったと思います。
パールマンが九響と共演してメンデルスゾーンの協奏曲を弾いたことがあって、これには大感激。以来、パールマンの大ファンになりました。
また、太期先生が弾いていらした福岡モーツァルトアンサンブル(1970~90年代に活躍した名弦楽四重奏団)もよく聴きに行って、カルテットにも親しんでいました。
中1から岸邊百百雄先生に替わり、レッスンが厳しくなり、自分でも音楽の道に行こうかな、という思いが芽生えてきて、だんだん練習も頑張るようになりました。そのころ、メータ指揮イスラエル・フィルを聴いて大感動。《英雄》とアンコールの《スラヴ舞曲第8番》をいまだに憶えています。弦の表現力が圧倒的でした。
高校は地元の普通科です。東京藝大へ行きたい気持ちがあったので、3年間は音楽が中心の生活。ただ最初は合格できず、東京で浪人生活に入りました。浪人時代は原田幸一郎先生に師事したのですが、ある時、先生に「ヴィオラをやってみないか」と勧められて。その日のうちに楽器屋さんでヴィオラを借りて、弾き始めました。「普通、楽器を替える時はもっと悩むものだよ」と後で原田先生に叱られましたが(笑)。ずっとカルテットを聴いてきてヴィオラの音が好きでしたし、初めて弾いた時も豊かな響きがいいな、と。全く迷わなかったですね。
翌年、ヴィオラで東京藝大に合格。大学と大学院の6年間、菅沼準二先生に鍛えられました。大学院1年の秋に都響のオーディションを受け、翌93年に入団。 都響に入ってからは、ペーター・マークさんの独特のルバート、ベルティーニさんの引き締まった音楽、インバルさんの完全燃焼……と、本当に良い体験ができて、感謝しています。
ナマの演奏の素晴らしさを、もっと多くの人に伝えたいですね。音楽は人と人とのコミュニケーション。同じ空間の中で、気持ちを共有できる。都響はそんな時間を作り出せるオーケストラですし、これからもその場に関わっていきたいと思います。
(『月刊都響』2013年10月号 取材・文/友部衆樹)