【7/19公演リポート】都響スペシャル2020(7/19)
レポート鬱陶しい気分を切り裂き、大きな力を授けた大野和士&都響、本條秀慈郎の快演
東京都交響楽団「都響スペシャル2020(7/19)」の7月19日、東京文化会館大ホールのハーフサイズの昼公演は本来、翌日夜に同じ会場で予定していた第905回定期演奏会Aシリーズに代わる形で開かれた。
本来の定期の曲目は:
1)ターネジ「タイム・フライズ(Time Flies)」(2020=都響とBBCラジオ3、NDRエルプフィル共同委嘱作品/世界初演)
2)藤倉 大「三味線協奏曲」(管弦楽版 2018/2019)
3)ヤナーチェク「シンフォニエッタ」
ターネジの世界初演は〝お預け〟となり、冒頭はメンデルスゾーンの「劇付随音楽《真夏の夜の夢》序曲」に。大勢の金管奏者がエキストラで必要なヤナーチェクは飛沫拡散の危険も高いためか、生誕250周年にちなむベートーヴェンの「交響曲第2番」に差し替えられた。多少カットを施したとはいえ、藤倉の「三味線協奏曲」が残ってくれて、本当に良かった。
藤倉に作曲を委嘱した独奏者、本條秀慈郎は現代彫刻家を父に持ち、最初の楽器は中学生で始めたエレキギター。さらにピアノ、オーケストラへ関心を広げた末、三味線に行き着いた。ロックを思わせるグルーヴ感(ノリ)、うねり悶え、エクスタシーを放ちながら一気にクライマックスへとなだれ込む迫力は楽器の特殊性を超え、第一級のアーティストの域に達している。藤倉もロックの造詣が深い一方、年々歳々、遠く離れて久しい日本に長く流れてきた音の世界への傾倒を深めてきた。三味線の音も生かしつつ、新しい表現の可能性を多彩に示し、耳を釘付けにする。大野と都響のコラボも、ばっちり決まった。本條ともども梅雨と感染症再拡大に覆われた鬱陶しい気分を切り裂き、やっとの思いで詰めかけた聴衆に対し、明日に生きる大きな力を与えたと思う。
ベートーヴェンの交響曲では「第3番《英雄》」がロマン派の扉を一気に開いた「革命的作品」とされがちだが、実際は「第2番」の段階で随所に導火線が仕掛けられていた。大野と都響の演奏は、その熱気と狂気を隅々まで引き出した。1曲目のメンデルスゾーンから際立っていた木管首席奏者たちのソロはここで、名人芸の極みに達した。弦の厚み、切れ味の両立も目覚しく、まずは理想的なベートーヴェンの再現が成就した。
文/池田卓夫(音楽ジャーナリスト@いけたく本舗®︎)
2020年7月19日(日)
東京文化会館
指揮/大野和士
三味線/本條秀慈郎
メンデルスゾーン:劇付随音楽《真夏の夜の夢》序曲 op.21
藤倉 大:三味線協奏曲(管弦楽版 2018/2019)[日本初演/作曲者公認のショート・ヴァージョン]
ベートーヴェン:交響曲第2番 ニ長調 op.36
配信期間 :8/5(水)10:00~9/30(水)23:59
価格 :1,000円
配信ページはこちら→ https://w.pia.jp/t/tmso-sp0719/