クラウス・マケラ 都響との再共演に寄せて
ニュース4年ぶりに日本を訪れることができ、前回すばらしい時間を過ごすことができた東京都交響楽団のみなさんと再びご一緒できることを大変楽しみにしています。高い集中力とすばらしい想像力を持った音楽家のみなさんとの演奏は本当に楽しく、しかも個人的には世界最高のホールであるサントリーホールで初めて演奏できたことも強く印象に残っています。今回はショスタコーヴィチの交響曲第7番とマーラーの交響曲第6番というプログラムを用意いたしました。この両曲とも、都響ともサントリーホールともとても合うプログラムだと思います。
ショスタコーヴィチの交響曲第7番は、私の最愛の曲のひとつです。今回、ぜひ日本で演奏したいと思いました。マーラーの交響曲は目下集中的に取り組んでいるレパートリーです。交響曲第6番は今年初めて取り組む作品になります。本来2月にストックホルムで指揮するはずでしたが、編成が大きすぎるということで変更になってしまいました。私は同じ曲をさまざまなオーケストラと演奏し、それぞれのもつ響きや音色の違い、異なる演奏文化などに応じて実験するのが好きなのです。
マーラーの交響曲第6番は、彼の交響曲の中で私がもっとも身近に感じる曲です(Mahler’s Symphony No. 6 is closest of Mahler’s symphonies)。かなり小さい頃に親しんだ曲で、それ以来ずっと大好きなのです。もしかしたらフィンランド人の悲観的な国民性に合うのかもしれませんね(笑)。きわめて暗い曲で、精神的にはシベリウスの第4番と共通するものがあるかもしれません。どちらの曲も完全な悲劇で終わります。でもなぜか——説明はできないのですが——この曲には強いつながりを感じるのです。
ジノヴィエフの「バッテリア」は、私が気に入っている現代曲のひとつです。ジノヴィエフの作品は私がこの5〜6年、集中的にプログラムに取り入れてきました。彼はロシア人の血を引くフィンランドの作曲家です。そのオーケストラ書法は際立っており、情報力とファンタジーに富んでいます。こちらもかなり悲劇的な色合いの強い作品です。なぜなら、2016年のフランスのニースでのテロ事件に触発されて書かれた曲だからです。したがって、重苦しさもありますが、でもとても印象的な曲です。ぜひこの作品を日本で初演したいと思いました。
日本の聴衆のすばらしさは前回の客演を通して私の記憶にしっかり刻まれています。コロナ禍を経て、ようやくみなさんとお会いできることを楽しみにしています。きっと私にとって今年の大きなハイライトになることでしょう。
(取材・聞き手:後藤菜穂子/取材協力:レコード芸術)