平和への希求を音に託して、ウクライナ出身作曲家の楽曲を演奏します(4/21.22)
ニュース東京都交響楽団は、戦火に苦しむウクライナの人々に寄り添う思いを示すとともに、同国の芸術文化を多くの方に知っていただくため、以下演奏会にてウクライナ出身作曲家であるヴァレンティン・シルヴェストロフの『ウクライナへの祈り』をプログラムに追加して演奏することとしましたのでお知らせします。
また、この演奏をより多くの人に届けるため、演奏会映像(4/22)を後日都響公式YouTubeチャンネルにて配信するとともに、ウクライナへの支援のため以下演奏会のチケット売上の一部を寄付します。
平和への希求を込めた演奏が多くの人々の胸に届き、その思いを一つにする機会となることを楽団一同願っております。
都響音楽監督・大野和士よりメッセージ
ウクライナ出身の有名音楽家といえば、作曲家ではプロコフィエフ、ヴァイオリニストではオイストラフ、ミルスタイン、エルマン、コーガン、アイザック・スターン、ピアニストでは、ホロヴィッツ、リヒテル、ギレリス、教育者としても有名なネイガウス、日本でもファンの多かったチェルカスキー、番外編として、ウクライナ出身の両親を持つレナード・バーンスタインと、枚挙にいとまがありません。
ロシア出身の音楽学者で、ウクライナ出身のご夫君を持つロンドン・フィルのアーティスティック・ディレクター、エレナ・ドュビネッツ氏は、業界誌に「これらの優秀な音楽家たちが、歴史上『ウクライナ人』とは認識されなかった」ことを指摘し、現代でもロシアの影に隠れ、受けるべき脚光を浴びなかったウクライナ人作曲家たちに言及しました。
今回演奏する、シルヴェストロフ氏も1960~1970年代、エネルギーに溢れた前衛的な作品を発表し続けたお一人です。
「ウクライナへの祈り」という、2014年の作曲時に、今日をすでに予想していたかのような作品-この曲をお聞き頂きながら、私たちの思いをウクライナに馳せたいと思います。
大野和士
公演情報
◆都響スペシャル(4/21)
日時:4月21日(木) 19:00開演|会場:東京オペラシティ コンサートホール
◆第948回定期演奏会Aシリーズ
日時:4月22日(金) 19:00開演|会場:東京文化会館
指揮/大野和士
ピアノ/藤田真央
ヴァイオリン/矢部達哉(都響 ソロ・コンサートマスター)
ヴァレンティン・シルヴェストロフ (アンドレアス・ジース編曲) : ウクライナへの祈り(管弦楽版) [日本初演]
シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 op.54
R.シュトラウス:交響詩《英雄の生涯》 op.40
【曲目解説】
シルヴェストロフ(ジース編曲):ウクライナへの祈り(2014/2022)
ヴァレンティン・シルヴェストロフ(1937~)はウクライナの首都キーウ(キエフ)に生まれた作曲家。前衛的な作風で出発したが、1970年代に独自の瞑想的な書法へ転じた。交響曲や大規模な合唱曲をはじめ、弦楽器やピアノのための精緻な小品まで幅広いジャンルで作品を書いている。彼は1970年から2022年初頭までキーウを拠点に活動していたが、ロシアのウクライナ侵攻のため、2022年3月にベルリンへの避難を余儀なくされた。
2014年2月、キーウで起きた反政府デモは騒乱に拡大(「ユーロマイダン」または「尊厳の革命」と呼ばれる)、親ロシア派のヤヌコーヴィチ大統領を失脚させたが、流血の事態により市民80人が亡くなった(死者数は諸説あり)。その真っ只中にいたシルヴェストロフは、抵抗の意志を込めて多くの合唱曲(讃歌、エレジーなど)を書き、それらは後に「Maidan cycle of cycles」という曲集にまとめられた。
《ウクライナへの祈り》はその1曲で、無伴奏混声合唱による4分ほどの作品。調性感のある静謐な響きで「主よ、ウクライナを守りたまえ/われらに力と信仰と希望を与えたまえ/われらの父よ」と歌われる。この度のウクライナ危機を受けて管弦楽版(アンドレアス・ジース編曲)と室内管弦楽版(エドゥアルト・レサチュ編曲)が作られ、現在この2つの版は原曲の合唱版と同様に世界中で演奏されている。
(友部衆樹)
作曲年代 | 2014年 管弦楽版 編曲/2022年 |
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初 演 | 管弦楽版 世界初演/2022年3月2日 ピエール・ジョルジョ・モランディ指揮 オールボー交響楽団(デンマーク) 日本初演/2022年4月21・22日(当公演) 大野和士指揮 東京都交響楽団 |
楽器編成 | フルート2、オーボエ、クラリネット2、ファゴット、ホルン2、ティンパニ、ハープ、弦楽5部 |