定期演奏会 Cシリーズ

第998回定期演奏会Cシリーズ

終了日時：2024年5月11日（土） 14:00開演（13:00開場）

場所：東京芸術劇場コンサートホールホール案内座席表

【定期演奏会1000回記念シリーズ③】

託児サービス

出演

指揮／尾高忠明
ピアノ／アンヌ・ケフェレック
※ソリストが変更になりました。(5/10up)

プロフィール一覧

尾高忠明　Tadaaki OTAKA（指揮者）

1947年生まれ。国内主要オーケストラへの定期的な客演に加え、ロンドン響、ロンドン・フィル、BBC響、ベルリン放送響など世界各地のオーケストラに客演。
1991年度サントリー音楽賞受賞。1997年には英国エリザベス女王より大英勲章CBEを授与された。1999年には英国エルガー協会より日本人初のエルガー・メダルを授与され、1993年王立ウェールズ音楽演劇大学より名誉会員の称号、ウェールズ大学より名誉博士号、2012年有馬賞（NHK交響楽団）、2014年北海道文化賞、2018年度関西「音楽クリティック・クラブ賞」本賞、大阪文化祭賞、日本放送協会放送文化賞、2019年JXTG音楽賞洋楽部門本賞などを受賞。2021年11月、旭日小綬章を受章。
現在、N響正指揮者、大阪フィル音楽監督、BBCウェールズ・ナショナル管桂冠指揮者、札響名誉音楽監督、東京フィル桂冠指揮者、読響名誉客演指揮者、紀尾井ホール室内管桂冠名誉指揮者。また2021年から「東京国際音楽コンクール〈指揮〉」の審査委員長に就任。複数の大学で後進の指導も積極的に行っている。

アンヌ・ケフェレック　Anne QUEFFÉLEC（ピアノ）

パリ生まれ。パリ国立高等音楽院を首席で卒業後、ウィーンでパウル・バドゥラ＝スコダ、イェルク・デームス、アルフレッド・ブレンデルに師事。1968年ミュンヘン国際音楽コンクール優勝、翌年リーズ国際ピアノ・コンクール入賞。
これまでに、ロンドン交響楽団、ロンドン・フィル、フィルハーモニア管、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団、フランス国立管弦楽団、フランス国立放送フィル、アカデミー室内管弦楽団等のオーケストラと、ピエール・ブーレーズ、ジョン・エリオット・ガーディナー、フィリップ・ジョルダン、デイヴィッド・ジンマン、クリストフ・エッシェンバッハ、イルジー・ビエロフラーヴェク、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ、マレク・ヤノフスキ等の指揮者と共演している。
1990年、ヴィクトワール・ドゥ・ラ・ムジークの年間最優秀演奏家賞を受賞。フランス各地での主要音楽祭やBBCプロムス、日本では「ラ・フォル・ジュルネ」音楽祭に度々登場し高い人気を誇る。
エラート、ヴァージン・クラシックス、ミラーレから数多くの録音を残し、『サティと仲間たち』でディアパゾン・ドール賞を受賞。2023年に最新盤『モーツァルト：ピアノ協奏曲第20番＆第27番』（リオ・クオクマン指揮パリ室内管弦楽団）をリリース。映画「アマデウス」ではサー・ネヴィル・マリナーとの共演でピアノ協奏曲を演奏し、話題を呼んだ。

photo:©Caroline Doutre

曲目

武満徹：《3つの映画音楽》より

曲目解説
：映画『ホゼー・トレス』から「訓練と休息の音楽」
：映画『他人の顔』から「ワルツ」
モーツァルト：ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466
ウォルトン：交響曲第1番変ロ短調

曲目解説

武満徹：《3つの映画音楽》より
映画『ホゼー・トレス』から「訓練と休息の音楽」
映画『他人の顔』から「ワルツ」

　石原慎太郎の原作・脚本による映画『狂った果実』（1956年7月公開／監督：中平康（なかひらこう））は、石原裕次郎の主演デビュー作であると同時に、武満徹（1930～96）の映画音楽デビュー作でもあった。この映画のために武満はハワイアンやジャズ風の音楽を書いたが、同時期の作品である出世作《弦楽のためのレクイエム》（1957年6月20日初演）も実は、ジャズ・ピアニストのレニー・トリスターノによる楽曲「レクイエム」にインスピレーションを受けたと作曲者自身が後年になってから語っている。
　さらにいえばこの頃、稼ぎの少なかった武満は、ベニー・グッドマンの強い影響下にあったクラリネット奏者鈴木章治（しょうじ）のジャズ・バンドで編曲や楽器の積み下ろしを手掛けていたらしい。つまりプレーヤーでこそなかったものの、若き武満はジャズの現場をしっかり経験していたのだ。

　『ホゼー・トレス（Jose Torres）』（1959）は映画監督などマルチに活躍した勅使河原（てしがはら）宏と武満が初タッグを組んだ映画で、ニューヨークで撮られた25分ほどのドキュメンタリー。タイトルになっているのはプエルトリコ出身の黒人ボクサーの名前で、彼の日常と試合が描かれる（ちなみにトレスのトレーナーであるカス・ダマトは後にマイク・タイソンを育てたことで有名だ）。当初、ジャズ・バンドの編成で音楽を書いていたが、それが気に入らなくなった武満本人の希望で弦楽オーケストラに変更された。
　「訓練と休息の音楽」はその題名通り、映画のなかでトレスが訓練する映像にあわせた音楽を主部に、休息（煙草やトランプによる気晴らしと、試合後）の場面の音楽を中間部にしており、3部形式に仕立て直された。ジャズのなかでも当時最先端のモード・ジャズ風で、反復するベースのパターンが音楽を牽引。はからずもジャズの帝王マイルス・デイヴィスが1970年に、ジャック・ジョンソンという黒人ボクサーのドキュメンタリー映画のために生み出したジャズ・ロック（旋法modeに基づく反復音楽なので、モード・ジャズの延長線に位置している）の先駆となっているのが興味深い。
　トレスのドキュメンタリーは6年後に続編『ホゼー・トレスⅡ』が公開され、こちらも武満が音楽を手掛けたが、その間に勅使河原は作家安部公房が脚本を担った映画を撮り始める。『おとし穴』（1962）の音楽は武満だけでなく一柳慧、高橋悠治との共作だったが、続く『砂の女』（1964）、短編『白い朝』（1964）、『他人の顔』（1966）、『燃えつきた地図』（1968）は武満ひとりで音楽を担当した。

　『他人の顔』の主人公は仲代達矢演じる会社の常務（原作では所長代理）。勤務中の事故で負った大やけどで顔全体がただれてしまい、首から上は包帯を巻いている。京マチ子演じる妻から肉体関係を拒絶され、会社の人々からも腫れ物扱いされたことで、プライドの高い彼は顔だけではなく人間関係も失ったことに気づく。妻を同じ目に遭わせようとも考えたが、医者の提案で精巧に作られた仮面をつけて別の顔を手に入れ、他人として妻を誘惑し始める……。
　「ワルツ」は劇中において、主人公が医者と共に訪れた2度目のビヤホールで歌われる楽曲。片言のドイツ語をアコーディオン、バンドネオン、ピアノの伴奏で歌っているのは女優の前田美波里である。ドイツ語詞はブレヒト研究の第一人者である岩淵達治が手掛けたことからも分かるように、武満のねらいはベルトルト・ブレヒト＆クルト・ヴァイル風のワルツを書くことだった（ヴァイルの楽曲はジャズ・スタンダードにもなっている！）。2000年に岩淵自身が訳した日本語詞から引用すれば「思いもしなかった／突然君が他人になる／いま君の顔はこわばり／他人の仮面のよう」といったように、映画の主題をそのまま歌っている。この曲は弦楽オーケストラに編曲されてオープニング・テーマにもなった。

　《3つの映画音楽》は、1995年にスイスで開催されたグシュタード・シネミュージック・フェスティヴァルで武満がテーマ作曲家のひとりになったため、彼が手掛けてきた映画音楽で弦楽オーケストラを用いた楽曲から選ばれて編み直され、音楽祭で初演された組曲である（もう1曲は映画『黒い雨』から「葬送の音楽」）。ちなみに「訓練と休息の音楽」と「ワルツ」は角田健一によってジャズのビッグ・バンドに編曲されているのだが（アルバム『もうひとつの武満徹』に収録／2008年録音）、それを聴けば、より2曲ともジャズ的であることは誰の耳にも明らかだろう。
（小室敬幸）

作曲年代	1994～95年
初　　演	1995年3月9日　スイス　グシュタードウィリアム・ボートン指揮　イングリッシュ・ストリング・オーケストラ
楽器編成	スコアの指定／第1ヴァイオリン8、第2ヴァイオリン6、ヴィオラ4、チェロ4、コントラバス2（本日は第1ヴァイオリン10、第2ヴァイオリン8、ヴィオラ6、チェロ5、コントラバス4で演奏予定）

ウォルトン：交響曲第1番変ロ短調

　1920年代初め、ロンドンのクイーンズ・ホールの演奏会でスコアを開きながら、エイドリアン・ボールト（1889～1983）が指揮するエルガーの交響曲第2番を聴いたことは、まだ20代前半のウィリアム・ウォルトン（1902～83）が交響曲を書こうとする弾みになったと考えられる。
　イングランド中部オールダムの中流家庭に生まれたウォルトンは、オックスフォード大学クライストチャーチ・カレッジ附属聖堂の少年合唱団に入り、同大学に進学するが、学業に馴染めず中退する。その後、音楽大学に転じることもなく、大学時代に知遇を得た富豪シットウェル一族の支援のもと、独学で作曲技法を身に付けた。
　シットウェル家出身の詩人イーディス（1887～1964）の前衛詩に音楽を付けた《ファサード》、パウル・ヒンデミット（1895～1963）の独奏で初演されたヴィオラ協奏曲などで頭角を現し、1931年の革新的な聖書オラトリオ《ベルシャザールの響宴》ではストラヴィンスキーの《春の祭典》初演に匹敵する衝撃をイギリスの音楽界に与えた。

　この気鋭の少壮が成熟した作曲家への脱皮を図ったのが交響曲第1番である。パリー、スタンフォード、エルガー以来、英国にも交響曲の伝統が根付き、1930年代にはヴォーン・ウィリアムズ、ブライアン、バックス、ブリス、ラッブラらが新作に取り組んでいた。ウォルトンが私淑していたエルガーは「プログラムを持たない抽象的な音楽こそ芸術の最高形態」と語っているが、ウォルトンの交響曲はまさにこの系譜に属し、ベートーヴェン的な精神で1930年代中盤に作られた正攻法の交響曲と言えよう。
　1932年、指揮者ハミルトン・ハーティ（1879～1941）から新作の依頼を受け、作曲に取り組み始めたが、第1楽章から第3楽章までを書いていた時期にウォルトンはドイツ貴族の未亡人との恋愛関係が破綻。第2楽章の「悪意をもって」と第3楽章の「メランコリーをもって」という発想標語にはこの間の焦燥が投影されているかのようである。やがて失意のウォルトンはスランプに陥って筆が進まなくなってしまう。
　完成の遅れに業を煮やしたハーティからの圧力で第1～3楽章のみが1934年12月に初演された。その後、22歳年長の裕福なイギリスの子爵夫人の寵愛を得てウォルトンは精神の安定を取り戻し、ようやく第4楽章を完成させた。こうして全4楽章の初演は1935年11月にハーティが指揮するBBC交響楽団によってロンドンで行われた。

　第1楽章　アレグロ・アッサイ　ピアニシモのティンパニのトレモロで始まるが、遠方から近づいてくるような無窮動風の第2ヴァイオリンの刻みが徐々に音量を増し、チェロとコントラバスの荒々しい音型に続いてオーボエがシベリウス風の第1主題を奏でる。疾風のような第1＆2ヴァイオリンとヴィオラのフレーズ、ホルンとヴィオラとチェロによる穏やかな上昇音型により、最初のクライマックスに達する。第2主題は、第1ヴァイオリンとチェロによるゆったりとした旋律。
　作曲当時のイギリスで交響曲の模範と考えられていたシベリウス作品の影響も見られるが、硬質の管弦楽法はむしろウォルトンが傾倒していたプロコフィエフのそれを感じさせる。推進力を失わないまま、再現部を経て熱狂のうちにコーダとなる。
　第2楽章　プレスト・コン・マリツィア　諧謔的なスケルツォで「悪意をもって (con malizia)」というウォルトン特有のシニカルな言葉が記されている。何ものかに駆り立てられるようにひたすら突進する音楽で、コーダでは終わったかと思えば、全休止を挟んで管弦楽はさらに舞い上がっていく。
　第3楽章　アンダンテ・コン・マリンコニア　「メランコリーをもって (con malinconia)」と示された緩徐楽章である。独奏フルートが第1楽章の主題と関連した旋律を奏でる。第2主題は、ファゴットの5連符音型を伴って独奏クラリネットが提示する。ひたひたと広がっていく冷ややかな叙情は、シベリウスの交響曲第7番を思わせる。管弦楽が怒るように高潮し、やがて減衰すると独奏フルートが残って消え入るように終わる。
　第4楽章　マエストーソ～アレグロ、活気をもって燃えるように　迷いを吹っ切るように決然として開始される。続くアレグロ部分では第2楽章の気分が短い間戻ってくるが、音楽は強烈な推進力で進んでいく。中間部はフーガで、オーケストラの各セクションが白熱の勢いで次々と積み上がっていく様子は、バルトーク《管弦楽のための協奏曲》終楽章を連想させる。続いてスケルツォ風のヴィヴァチッシモ部に入り、その部分のクライマックスでティンパニが2人となり、打楽器も増強。そのままコーダへ突入する。静かに独奏トランペットが妙技を披露した後、《ベルシャザールの饗宴》の終結に酷似した、念を押すような音型で全曲が締めくくられる。
（等松春夫）

作曲年代	1933～35年
初　　演	第1～3楽章／1934年12月3日　ロンドンハミルトン・ハーティ指揮　ロンドン交響楽団全曲／1935年11月6日　ロンドンハミルトン・ハーティ指揮　BBC交響楽団
楽器編成	フルート2（第2はピッコロ持替）、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ（奏者2）、シンバル、小太鼓、タムタム、弦楽5部

【ソリスト・アンコール】（5/11up）
ヘンデル＝ケンプ編：メヌエットト短調
　（ピアノ／アンヌ・ケフェレック）

【急告】出演者及び曲目変更のお知らせ (5/10up)

【当日券情報】第998回定期演奏会Cシリーズ(5/10up)
都響主催公演では、都響WEBチケットで当日券を販売いたします。
　【販売時間】
公演当日10:00～開演時間の30分前まで。　※無くなり次第終了
　【販売席】
全席種販売予定
　【販売方法】
都響WEBチケット（座席選択可）
　【受取・支払方法】
①セブンイレブンで発券
　・セブンイレブンでお支払い（クレジットカード、現金でお支払いただけます）
　・都響会員割引がご利用いただけます。　
※会場近くにセブンイレブンが無い場合もございます。事前にご確認の上、ご来場く
ださい。（東京文化会館とサントリーホールは近くにございません）
②電子チケット（スマートフォンとLINEアプリが必要です）
　・クレジットカードでオンライン決済
　・都響会員割引・U-25割引がご利用いただけます。

なお、WEB当日券に余裕がある場合にのみ、会場でも販売いたします。
会場販売では、
・開場時間から販売いたします。※会場販売分の販売枚数が無くなり次第終了。
・座席ランクは選べますが、座席の場所はお選びいただけません。
・お支払はクレジットカード、交通系IC、QRコード決済でお願いします。現金はご利用いただけません。
・U-25割引がご利用いただけます。

※東京芸術劇場改修期間中（2024年9月末～）の定期Cは休止し、2024年度は全6回といたします。

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