＜公演中止＞都響スペシャル

終了日時：2021年4月25日（日） 14:00開演（13:00開場）

場所：サントリーホール

※4月26日（月）定期Bと同演目

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出演

指揮／大野和士
メゾソプラノ／藤村実穂子
テノール／宮里直樹※
※当初出演を予定していたニコライ・シュコフより変更になりました。

プロフィール一覧

大野和士　Kazushi ONO（音楽監督）

都響およびブリュッセル・フィルハーモニックの音楽監督、新国立劇場オペラ芸術監督。1987年トスカニーニ国際指揮者コンクール優勝。これまでに、ザグレブ・フィル音楽監督、都響指揮者、東京フィル常任指揮者（現・桂冠指揮者）、カールスルーエ・バーデン州立劇場音楽総監督、モネ劇場（ベルギー王立歌劇場）音楽監督、アルトゥーロ・トスカニーニ・フィル首席客演指揮者、フランス国立リヨン歌劇場首席指揮者、バルセロナ響音楽監督を歴任。フランス批評家大賞、朝日賞など受賞多数。文化功労者。2017年、フランス政府より芸術文化勲章「オフィシエ」を受章、またリヨン市からリヨン市特別メダルを授与された。
これまでにボストン響、ロンドン響、ロンドン・フィル、ゲヴァントハウス管、hr響（フランクフルト放送響）、パリ管、フランス放送フィル、スイス・ロマンド管、イスラエル・フィルなどを指揮。ミラノ・スカラ座、メトロポリタン歌劇場、英国ロイヤル・オペラなどに登場している。
2019、21年に自ら発案した国際プロジェクトで『トゥーランドット』『ニュルンベルクのマイスタージンガー』を指揮、ともに記念碑的な公演となり大きな話題を呼んだ。新国立劇場では、西村朗『紫苑物語』、藤倉大『アルマゲドンの夢』、渋谷慶一郎『スーパーエンジェル』を世界初演、また『ワルキューレ』『カルメン』『ペレアスとメリザンド』『ボリス・ゴドゥノフ』『ラ・ボエーム』『シモン・ボッカネグラ』『トリスタンとイゾルデ』と話題作を次々に手掛けた。2023年5月、作曲家マルティン・マタロンによる『メトロポリス』映画音楽コンサートでパリ管を指揮し、同作のフランス初演を成功へ導いた。

https://www.kazushiono.com/

藤村実穂子　Mihoko FUJIMURA（メゾソプラノ）

ヨーロッパを拠点に国際的な活躍を続ける、日本を代表するメゾソプラノ歌手。主役級としては日本人で初めてバイロイト音楽祭にデビュー、9年連続で出演し絶賛を浴びる。これまでにメトロポリタン歌劇場、ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場、英国ロイヤル・オペラ、バイエルン国立歌劇場などへ登場。ティーレマン、アバド、メータ、エッシェンバッハ、ハイティンク、シャイーらの指揮で、ウィーン・フィル、ベルリン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管などと共演。

photo©R&G Photography

宮里直樹（テノール）

東京藝術大学卒業。同大学院修了後、ウィーン国立音楽大学に学ぶ。第23回リッカルド・ザンドナイ国際声楽コンクール第2位、第48回日伊声楽コンコルソ第1位など、受賞多数。2017年日生劇場『ラ・ボエーム』ロドルフォ、東京二期会『蝶々夫人』ピンカートン、2019年東京芸術劇場コンサートオペラ『放蕩息子』アザエルに続き、2020年全国共同制作オペラ『ラ・トラヴィアータ』アルフレードに出演、公演を成功へ導いた。コンサートでは秋山和慶、小泉和裕、小林研一郎、尾高忠明らの指揮でＮ響、読響、日本フィル、東京フィルなどと共演。ヘンデル《メサイア》、ハイドン《天地創造》、ベートーヴェン《第九》、メンデルスゾーンの交響曲第2番《讃歌》、ヴェルディ《レクイエム》、オルフ《カルミナ・ブラーナ》、マーラーの交響曲第8番《千人の交響曲》などのソリストとして活躍している。今回が都響主催公演デビューとなる。二期会会員。

曲目

ショスタコーヴィチ：交響曲第1番へ短調 op.10

曲目解説
マーラー：大地の歌

曲目解説

　ドミトリー・ショスタコーヴィチ（1906～75）の交響曲第1番は、レニングラード音楽院の卒業制作として書かれた作品だ。着手は1924年10月だったが、当時、彼はまだ18歳になったばかりだった。12月初旬に第2楽章、1925年1月中旬に第3楽章が完成した。第4楽章にはやや苦労したようだが、書き始められると一気に進み、4月末には全曲のピアノ譜が完成、7月1日にはオーケストレーションも終了した。
　この曲の作曲当時、ショスタコーヴィチは、友人のピアニスト、レフ・オボーリン（1907～74）に、次のように書き送っている。「ひどい気分です。モスクワでは部屋が見つからないし、仕事もないし、ヴォロージャは死にかけているし、（中略）全く悲惨な中で、私は交響曲のフィナーレの作曲を始めました。それは非常に陰気な、ほとんど、陰気では並ぶもののないミャスコフスキーのようなものになりました」と。当時のショスタコーヴィチは、抜群の才能をもつ学生であることは知られていたが、病気がちで、父の死による生活苦を抱えていた。この手紙に出てくる「ヴォロージャ」こと詩人のウラジミール・クルチャヴォフは彼の親友だったが、実際に1925年6月に亡くなっている（ちなみにショスタコーヴィチは1924年4月にモスクワ音楽院作曲科にも編入、レニングラードとモスクワを往復する生活を送っていた）。
　卒業試験は1925年5月6日に行われ、アレクサンドル・グラズノフ（1865～1936）をはじめとする教師たちの前で、ショスタコーヴィチは、友人のパヴェル・フェルト（1905～60）とともに、この曲の2台ピアノ編曲版を演奏し、無事合格した。その後、彼が指揮を師事していたニコライ・マリコ（1883～1961）が、この曲の演奏を決め、翌年5月、マリコ指揮レニングラード・フィルによって正式な初演が行われ、大成功を収めた。やがてこの曲は、ブルーノ・ワルター（1876～1962）やレオポルド・ストコフスキー（1882～1977）といった世界の名指揮者たちに取り上げられ、ショスタコーヴィチの名を世界に轟かせることになる。
　第1楽章　アレグレット～アレグロ・ノン・トロッポ　ソナタ形式　トランペット独奏で始まる印象的な導入部のあと、行進曲風の第1主題がクラリネットで、ワルツ風の第2主題がフルートで出る。ヴァイオリン独奏で始まる展開部では、2つの主題のほか、導入部の主題も登場してクライマックスを築き、そのまま再現部に突入する。コーダでもちょっとした盛り上がりがあり、導入部の主題が再現され、謎を残すように印象的に終わる。
　第2楽章　アレグロ　3部形式　ショスタコーヴィチらしい戯画的なユーモアのあるスケルツォ。ピアノが独奏楽器として活躍する。中間部はフルート2本による民謡風の主題で始まる。
　第3楽章　レント　3部形式　夢幻的な雰囲気の主部は、冒頭でオーボエが吹く主題のほか、『トリスタンとイゾルデ』を思わせるチェロ独奏の旋律や、何度も登場する「タッタタ／ターータタ」というファンファーレ風の警告的な動機によって進む。主部と同じくオーボエの主題で始まる中間部は、後年のショスタコーヴィチ作品にしばしば現れる葬送行進曲のリズムを持っている。ヴァイオリン独奏が主題を奏でて主部が回帰したあと、小太鼓のトレモロによるクレッシェンドで切れ目なしに終楽章に入る。
　第4楽章　レント～アレグロ・モルト　自由なソナタ形式　第3楽章を回想するレントの導入部を経て、アレグロ・モルトの提示部へ。クラリネットによる半音階的な第1主題、弦と木管のfffによる第2主題が現れる。第2主題がヴァイオリン独奏とホルンで静かに繰り返されたあと、嵐のような展開部へ。突然、オーケストラが全休止となり、ティンパニがソロで肯定的な動機（第3楽章のファンファーレ動機の反行形）を打ち鳴らす箇所は特に印象的だ。短い再現部では第1主題が省略され、チェロ独奏が第2主題を歌う。すぐにコーダへ入り、トゥッティで第1主題と第2主題が組み合わされ、やがてティンパニの動機を繰り返しつつ、高揚の中で全曲を閉じる。
（増田良介）

作曲年代	1924年10月～1925年7月1日
初　　演	1926年5月12日　ニコライ・マリコ指揮　レニングラード・フィル
楽器編成	フルート3（第2、第3はピッコロ持替）、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、アルトトランペット、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、小太鼓、シンバル、大太鼓、タムタム、グロッケンシュピール、トライアングル、ピアノ、弦楽5部

　1907年はグスタフ・マーラー（1860～1911）にとって人生の曲がり角だった。最愛の長女を失い、医師から心臓病を宣告され、さらに反マーラー運動の中でウィーン宮廷歌劇場監督の地位を辞任せざるを得なくなるといった衝撃的な出来事を立て続けに経験することになったのだ。
　そうした中で出会ったのが中国の漢詩に基づくハンス・ベートゲ（1876～1946）のドイツ語による詩集『中国の笛』だった。若い時から常に生と死の問題を思索し作品で表現してきたマーラーだが、それは死の悲劇性、生を求めての勝利、救済思想といった西洋的な考え方に根差したものだった。しかし人生の転機に出会ったこの詩集に読み取れる東洋的な思想―諦観、世の儚さ、それゆえに溺れる歓楽、自然の悠久さを想う自然観―に、マーラーはこれまでの死生観とは異なる世界観を発見する。もちろん東洋思想といっても西洋的観点からの読み直しであり、ベートゲの詩集もハンス・ハイルマン（1859～1930）が独訳した漢詩を世紀末特有のペシミズム的観点から自由に翻案したものだった。
　従来の西洋的価値観を否定しようとした世紀末精神が東洋世界に目を向けた時に生まれた独自の世界―それにマーラーは深く共鳴し、このベートゲの詩に改変を加えたものを歌詞として声楽入りの「交響曲」を1908年夏にほぼ書き上げる（推敲は翌年まで）。それが《大地の歌》で、西洋的な救済思想に基づいたカンタータ風の前作第8交響曲と全く異なる、虚無的なペシミズムを基調とする作品となった。
　作品のスタイルの点でも《大地の歌》は、彼の交響曲の中では異例の作品である。これ以前の交響曲にも声楽を取り入れてきたマーラーだが、この《大地の歌》は、単に声楽の導入というのでなく、全くの連作歌曲集（第1、3、5楽章はテノール独唱、第2、4、6楽章がアルト〔またはバリトン〕独唱）の趣を呈しているのだ。本来付けるべき第9番という番号を彼がこの作品に付さなかったのも、妻アルマ（1879～1964）が伝える“第9番を書くと死ぬというジンクスを避けた”ことよりも、そうした歌曲集的なスタイルの作品であるということが大きかったようで、実際この作品の場合、本題はあくまで《大地の歌》で“交響曲”は副題的な扱いとなっている。
　それでもなおこれに交響曲と記したのは、歌曲としては幾つかの楽章（とりわけ終楽章）の規模が大きく形式上も複雑であること、作品全体が論理的な楽章構成で構築されていること、楽章相互に動機的関連が見られることなど、交響曲的な論理というものが全曲の土台としてあるからだろう。
　とりわけ、生と死の暗さを歌う第1楽章と人間の孤独を省察する第2楽章および人生への別離を表す長大な第6楽章を全体の枠組みとし、その間に青春、美、酒の歓楽を歌う短めの中間楽章（第3～5楽章）を挟むシンメトリックな構成は、この大曲全体を有機的に纏める役割を果たすとともに、作品の持つペシミズムを一層強調することにもなっている。
　第1楽章「現世の愁いをうたう酒歌」は李白の「悲歌行」に基づくが、ベートゲは原詩を自由に扱っている。冒頭ホルンの叫びに続いて第1＆第2ヴァイオリンに示される「ラ―ソ―ミ―ド」の主題はこの作品全体のいわば基本動機である。テノールによる自由な変奏有節歌曲の形をとるが、各節はソナタ形式の各部分に相当する役割を持っており、交響曲の冒頭楽章に相応しい自由なソナタ形式楽章とも見なし得る。各節終わりに「生は冥い死もまた冥い（Dunkel ist das Leben, ist der Tod.）」という語による下行旋律のリフレインを置くことでペシミズムの気分を際立たせているのが効果的。また第3節の前の長い間奏部分では悠久の自然への憧憬が表される。
　第2楽章「秋に寂しき人」は緩徐楽章に当たる楽章。原詩は銭起の作といわれるが明らかでない。前述の基本動機によるオーボエの物悲しい旋律に続いて、秋の情景の中での人間の孤独とその疲れをアルト独唱が静かに内省的に歌う。室内楽風の抑制された管弦楽の響きも詩の内容に相応しい。
　第3楽章「青春について」は、第4、5楽章とともにスケルツォに相当する楽章といえる。これら3つの楽章の明るい軽快さは暗い全曲の中ではオアシスのような役割も果たしているが、その明るさの裏には常にペシミズムが感じられる。テノール独唱による第3楽章の原詩は李白の作といわれているが確証はない。5音音階を用いた擬東洋的な音調のうちに青春のう　たかたの楽しみが歌われる。
　第4楽章「美しさについて」はアルト独唱による楽章。李白の「採蓮曲」を原詩とするベートゲの詩にマーラーは大きく手を入れている。岸辺で蓮を摘む乙女を歌う穏やかな主部に対して、荒馬にまたがる少年を描く中間部では激しい盛り上がりが示される。
　第5楽章「春に酔う人」は李白の「春日酔起言志」を原詩とする。酒をとおして人生の儚さをテノールが歌う点で第1楽章に通じるが、第1楽章の激しく暗い悲劇性に代わり、自虐的な陽気さと逃避的な夢の世界に結び付いた明るい音調が支配する。
　第6楽章「告別」は全曲の約半分の長さを占めるアルト独唱の大規模なフィナーレ。前半は孟浩然の「宿業師山房期丁大不至」、後半は王維の「送別」を原詩としているが、マーラーはベートゲの詩に手を入れ、さらに自身の詩句も付加して、当時の彼の死生観を反映させている。前半と後半の間には長大な管弦楽のみの間奏が挟まれているが、楽章全体がソナタ形式を下敷きとしていると見なすことも可能で、重々しい葬送行進曲の宿命的な歩み（ハ短調）による開始から、浄化された響き（ハ長調）による終結へとゆっくりとした流れのうちに導かれていく。
　最後は「永遠に（ewig）」という歌詞による下行2度音型の繰り返し（この音型は次作の第9交響曲冒頭に受け継がれる）とハ長調の主和音＋付加6度（ド―ミ―ソ―ラの基本動機）の和音のうちに“死にゆくように（ersterbend）”（スコアの指示）閉じられる。
（寺西基之）

※声部表記は、スコアに従って女声を「アルト」としています。

作曲年代	1907～09年
初　　演	1911年11月20日　ミュンヘン　ブルーノ・ワルター指揮
楽器編成	ピッコロ、フルート3（第3はピッコロ持替）、オーボエ3（第3はイングリッシュホルン持替）、小クラリネット、クラリネット3、バスクラリネット、ファゴット3（第3はコントラファゴット持替）、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、グロッケンシュピール、トライアングル、シンバル、大太鼓、タムタム、タンブリン、ハープ2、チェレスタ、マンドリン、弦楽5部、アルト独唱、テノール独唱

公演の中止について　詳細はこちら（4/23up）
4月23日に発出される緊急事態宣言及び都における緊急事態措置等により、コンサートを含むイベントに対して中止等の要請がされる見通しです。つきましては、公演の開催を中止いたします。
公演を楽しみにされていたお客様には急なお知らせとなり誠に申し訳ございません。何卒ご理解いただきますよう、お願い申し上げます。

ソリスト変更のお知らせ（2021年4月25日都響SP、26日定期B）　詳細はこちら（3/25up）

※等間隔での空席設定は行いませんが、引き続き、感染症の拡大防止のため、一部の座席は販売いたしません。また、政府や自治体によるイベント開催要件に変更があった場合は、販売の一時停止や入場者数上限の設定等を行います。

・基礎疾患（糖尿病・心不全・呼吸器疾患等）をお持ちの方や体調に不安のある方は、医師の判断や関係機関の情報をご確認の上、慎重なご判断をお願いいたします。当面の間、当日券は必ず販売いたします。外出や体調に不安のある方は当日券（都響WEBチケットのみ）をご検討ください。
・必ず、「来場されるお客様へのご案内」の内容に同意いただいた上でお申込みください。
・急遽出演者や曲目変更、または公演中止となる場合がございます。公演中止の場合を除き、払い戻しはいたしません。
但し、急な体調不良・発熱等の理由でご来場いただけなくなった場合は、期間内に下記フォームよりご連絡ください。購入者へチケット代金の払い戻しをいたします。連絡が無い場合の欠席については、払い戻しいたしかねます。（払い戻しには、半券が切り取られていない状態のチケットが必須となります）。
［払い戻しフォーム］https://www.tmso.or.jp/j/henkin/（公演当日10：00～開演1時間前）
※お電話の場合、公演当日、都響ガイド（0570-056-057）にて払い戻し専用の電話番号をお知らせいたします。

聴きどころ

4月20日A定期での第1交響曲と対を成すかのように、マーラー晩年の傑作《大地の歌》を、音楽監督・大野和士の指揮でお届けします。唐詩のドイツ語訳をテキストにし、耽美的な音楽と諦観に満ちた6つの楽章は、当時のマーラーの心情を伝えると同時に、交響曲と歌曲集の高次元の融合ともいうべき独創性で聴く者に常に深い感動をもたらします。対する前半は、マーラー後の最大のシンフォニスト、ショスタコーヴィチの出世作。シリアスさと諧謔性の同居はマーラーの影響も明らか。交響曲の歴史の一端を垣間見るかのようなプログラムです。