プロムナードコンサート

五大陸音楽めぐり


2019年度のプロムナードコンサートは、来る2020年への気運醸成の意味も込め「五大陸音楽めぐり」というテーマのもといつにもまして多彩で親しみやすいプログラムをお届けします。

© Steve J. Sherman

五大陸音楽めぐり①
聴きどころ

新天地アメリカで活躍した、3人の作曲家たち

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文/飯田有抄(音楽ライター)


 プロムナードコンサート「五大陸音楽めぐり」第1弾は、アメリカ大陸です。「European Composers in America」と題して、ヨーロッパで生まれ、アメリカ大陸に渡った3名の作曲家の作品をお楽しみいただきます。

 映画音楽のジャンルにおいて新天地アメリカで活躍したエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト(1897〜1957)は、オーストリアでユダヤ系の家庭に生まれた人。幼少期より作曲し、神童と見做された彼は、マーラーにも才能を認められていました。若干23歳でオペラ「死の都」(1920)で大成功を納めるも、ナチスの台頭によりユダヤ系の彼はアメリカへと亡命。政治的理由から余儀なくされたアメリカ生活ですが、大戦中はハリウッドの映画音楽を手掛け、豊かなオーケストラ・サウンドによってのちの映画音楽にも大いに影響をもたらしました。戦後は再び芸術音楽への情熱を燃やし、1945年に作曲されたのがヴァイオリン協奏曲です。

  • © Yuji Hori

  • 左:アンドリュー・リットン、右:三浦文彰

 近年ますます評価が高まるこの協奏曲を、本公演では気鋭のヴァイオリニスト、三浦文彰が独奏を聴かせます。16歳という若さでハノーファー国際コンクールの覇者となり一躍脚光を浴びてから10年。国内外の主要オーケストラとのツアーを成功させ、一層の活躍を遂げる三浦が、この伸びやかなコルンゴルトの旋律を、鮮やかに歌い上げてくれることでしょう。
 
 タクトを取るのは、都響とは4度目の共演となるニューヨーク生まれの指揮者アンドリュー・リットン。リットンと三浦は、2017年にアメリカのユタ交響楽団で共演し、エルガーのヴァイオリン協奏曲で好評を博しました。今回の公演でもブリリアントで推進力あふれる音楽を聴かせてくれるに違いありません。
 
  そしてマエストロが、コルンゴルトの協奏曲とのカップリングにと推したのがフレデリック・ロウ(1901〜1988)作曲のミュージカル「マイ・フェア・レディ」序曲です。コンサートはこの序曲で華やかに幕開けします。ブロードウェイで1956年から6年6ヶ月に及ぶロングランを記録したミュージカル「マイ・フェア・レディ」は、オードリー・ヘップバーン主演の映画(1964年)を通じてご存知の方も多いことでしょう。作曲者のロウはベルリン生まれ。父親はベルリンとウィーンで活躍したオペレッタ歌手でした。ロウ自身の証言によれば、彼もまた13歳でベルリン・フィルと共演するなど、若くして才能を発揮していたとのこと。1924年、アメリカから出演依頼のあった父親とともに、ロウも大陸へと移住。ブロードウェイの作曲家を目指し、1940年代に台本作家のアラン・ジェイ・ラーナーと出会ってヒット作を生み出しました。「マイ・フェア・レディ」序曲の後半には、このミュージカルの名ナンバー《踊り明かそう》のメロディーも登場します。
 
  コンサートは、アントニン・ドヴォルザーク(1841〜1904)の交響曲第9番ホ短調「新世界より」締めくくられます。チェコの作曲家ドヴォルザークが、アメリカのニューヨーク・ナショナル音楽院に招かれ、大陸滞在中に作曲した名曲です。アメリカ先住民族を描いた叙情詩にインスピレーションを得て書かれた第2楽章のメロディーは、「家路」や「遠き山に日は落ちて」といった歌にも編曲され、広く愛されています。迫力の最終楽章を、リットンの指揮がいかに立体的に響かせてくれるかも、聴きどころの一つ。新天地で生み出された作曲家たち渾身の調べを、ぜひご堪能ください。

© Yoshinori Kurosawa

五大陸音楽めぐり②
聴きどころ

東からの風、南からの熱を体感しよう

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文/佐伯茂樹(音楽評論)


「五大陸音楽めぐり」と銘打たれた今年度の都響プロムナードコンサートの第二弾のテーマは「東からの風、南からの熱」。クラシック音楽の中心地であった西欧の人々から見て「東」にあるアジアや「南」に位置するスペインなどの、情熱的で異国情緒に溢れた音楽が集められている。

オセアニアから日本に送られたメッセージ

 プログラムの中で一際目を引くのは、これが日本初演になる「オセアニアより」であろう。作曲者のピーター・スカルソープ(1929-2014)は、オーストラリアのタスマニア島出身で、オーストラリアの自然や先住民族を作品の中で描いていることが多い。

 この「オセアニアより」も例外ではなく、オセアニアで楽器として用いられる法螺貝の吹奏から始まり、アボリジニの大地での踊りを思わせるような打楽器が加わっていき、次第に融合してダンサブルなリズムを形成する。小難しい現代音楽ではなく、リズムや音響が我々の体内に入り込んできて、古い記憶を呼び覚ますように心を揺さぶる。これはぜひとも実演の空気の振動で体験しておきたい。

 実は、この曲は、1970年の大阪万博の際に依頼されて作曲した「日本のための音楽」の一部を2003年にスカルソープが改作したもの。オセアニアから日本に送られたメッセージでもあるわけだ。そこには、同じ法螺貝の文化を持つ日本の音楽に対する憧れと敬意が込められているのである。にも関わらず、これまで日本で演奏されなかったのは不思議ですらあるが、そういった意味でも今回の日本初演を聴き逃すわけにはいかないだろう。

  • 法螺貝(イメージ)

  • ピーター・スカルソープ © Courtesy of BRIDGET ELLIOT. All rights reserved.

「カワケン」こと川瀬賢太郎が都響定期初登場!

 今回のプロムナードコンサートを指揮するのは、都響定期演奏会では初登場になる川瀬賢太郎。「カワケン」の愛称で親しまれ、既成概念に囚われない生き生きとした音楽で現在最も注目を集めている彼にふさわしいプログラムである。とりわけ、リズムの新鮮なノリと鮮やかな色彩感が求められる「オセアニアより」は、川瀬の若い柔軟性と本能的とも言えるバランス感覚が最大限活かされる楽曲であり、彼のアイデア溢れる解釈に都響のメンバーも奮闘するに違いない。同じくバランスとリズム感と色彩感が求められるラヴェルの「ボレロ」も新鮮な名演が期待できる。都響のメンバーも、聴きにいらしたお客様も、そして川瀬本人も爽やかな笑顔で称えあう姿が目に浮かぶようだ。


エキゾチックな名曲たちにも注目

 もちろん、この日の聴きものはスカルソープとラヴェルだけではない。邦人作品を得意とする川瀬だけに、伊福部昭の「交響譚詩」を都響との共演でどのように聴かせるのか期待が膨らむ。さらに、ハープの世界的名手吉野直子をソリストに迎えたロドリーゴの「アランフェス協奏曲」のハープ版も実に興味深い。このハープ版は、吉野がしばしば取り上げているレパートリーで、往年のスペインのハープの名手ニカノール・サバレタが作曲者のロドリーゴに依頼して作らせたと言われている。上品なイメージのあるハープで、どこまで情熱的なスペイン情緒を表現できるのか楽しみである。

 プログラムには他に、J.シュトラウス2世の「エジプト行進曲」も含まれているが、この異国情緒たっぷりの作品を川瀬がどのように楽しませてくれるかは当日のお楽しみということにしよう。

© Yoshinori Kurosawa

© Sayaka Ikemoto

五大陸音楽めぐり③
聴きどころ

Coming Soon...


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© Fumiaki Fujimoto

五大陸音楽めぐり④
聴きどころ

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© Fumiaki Fujimoto

五大陸音楽めぐり⑤
聴きどころ

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公演情報

プロムナードコンサート No.382
五大陸音楽めぐり① 「European Composers in America」

2019年6月2日(日) 14:00開演(13:20開場)
サントリーホール

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指揮/アンドリュー・リットン
ヴァイオリン/三浦文彰

ロウ:ミュージカル『マイ・フェア・レディ』序曲
コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35
ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 op.95 B.178《新世界より》

プロムナードコンサート No.383
五大陸音楽めぐり② 「東からの風、南からの熱」

2019年10月20日(日) 14:00開演(13:20開場)
サントリーホール

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指揮/川瀬賢太郎
ハープ/吉野直子

スカルソープ:オセアニアより(2003)(日本初演)
J.シュトラウス2世:エジプト行進曲 op.335
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲(ハープ版)
伊福部 昭:交響譚詩
ラヴェル:ボレロ

プロムナードコンサート No.384
【五大陸音楽めぐり③ 「ロシア・グレイテスト・ヒッツ」】

2019年11月23日(土・祝) 14:00開演(13:20開場)
サントリーホール

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指揮/エリアフ・インバル
ピアノ/サスキア・ジョルジーニ

ショスタコーヴィチ:祝典序曲 op.96
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 op.43
チャイコフスキー:幻想序曲《ロメオとジュリエット》
チャイコフスキー:祝典序曲《1812年》op.49

プロムナードコンサート No.385
【五大陸音楽めぐり④ 「音楽の世界遺産─不滅の名曲集」】

2020年2月8日(土) 14:00開演(13:20開場)
サントリーホール

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会員先行:9/6(金) 一般発売:9/13(金)

指揮/小泉和裕

ヴェルディ:歌劇『運命の力』序曲
リスト:交響詩《レ・プレリュード》 S.97
ムソルグスキー:歌劇『ホヴァンシチナ』前奏曲「モスクワ河の夜明け」
ハチャトゥリャン:バレエ音楽《ガイーヌ》より「剣の舞」「バラの乙女達の踊り」「レズギンカ」
リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲 op.34
ビゼー:《アルルの女》組曲第2番

プロムナードコンサート No.386
【五大陸音楽めぐり⑤ 「躍動する音のドラマ」】

2020年3月22日(日) 14:00開演(13:20開場)
サントリーホール

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会員先行:9/6(金) 一般発売:9/13(金)

指揮/大野和士
フルート/柳原佑介

R.シュトラウス:交響詩《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら》op.28
ニールセン:フルート協奏曲
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
R.シュトラウス:歌劇『ばらの騎士』組曲