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ニュース一覧 2018.11.05 up

レポート

大野和士&都響メンバーが都立青山高校で特別講義「第20回 都響マエストロ・ビジット」

「都響マエストロ・ビジット」は、都響の指揮者が都内の小中学校や高校を訪問して開く特別講義。2018年度は9月7日に音楽監督・大野和士と都響メンバーが都立青山高等学校(渋谷区)を訪問、100分の講義を行った。


レクチャー
生徒たちに語りかける大野和士

 参加した生徒たちは、青山フィルハーモニー管弦楽団(通称:青フィル)の部員67名。青フィルは都立青山高等学校の部活動として1970年に設立、高校オーケストラとして高い評価を受けている団体だ。
 前半は、まず大野和士が「指揮者になったきっかけや“音楽家の使命”」などを語りかけた。


 「幼いころからクラシック音楽に親しむ家庭に育ち、特に“指揮者”に憧れがありました。5歳でピアノとオルガンを始め、高校では“歌う”ことに惹かれて合唱部に入部。はじめ部員は20数名でしたが、大曲をやりたくて自ら周りに声をかけて部員を集め、高3の時は90名以上に。オーケストラも組織してショスタコーヴィチ《森の歌》全曲をやったりしました。大学を経てミュンヘンへ留学、そこで出会った師が指揮者パタネーとチェリビダッケ。彼らは数日前に仕上がった新曲でさえ、音符から練習番号まで完璧に記憶してオーケストラへ指示を出すのです。自分はこんな世界で果たしてやっていけるのか、と無力感にさいなまれました。その後、指揮者コンクールで優勝し、ヨーロッパで仕事がスタートしました。

セッション
指揮法のミニ・レッスン

 最初にポストを得たのはクロアチアのザグレブ・フィルです。ところが着任した翌年にクロアチア紛争が起こり、4年半にわたって空襲が続きました。しかしオーケストラは演奏をやめなかった。オーケストラのメンバーは多国籍で、クロアチアをはじめドイツやイタリアの人もいる。彼らを日本人の私が指揮をする。演奏は熱気に満ち、会場には大きな歓声と拍手があふれていました。

 ナショナリズムを掲げて民族が対立する――そんな中でも、音楽という共通語によって、人は国境や民族を超えて互いに理解することができる。音楽は人と人を結ぶ。この感動を伝えることが、音楽家の使命ではないか。その思いが、自分の原点となりました。

 外国の人と思いを通わせるには言葉を学ぶ必要がありますが、音楽は世界共通語です。人間が素晴らしいのは、それを受け取る感性をもっていること。感性は平等です。感性を磨くこと、心に響く体験を大事にしてください。そうすることで人生が豊かになり、より多くの人と結ばれていくからです」

 世界で活躍する指揮者にも、若き日はある。夢の実現に向けて頑張ったり、目の前の現実に押しつぶされそうになったり……。実体験にもとづく話は、多感な高校生たちに大きく響いたはずだ。


セッション
《新世界より》第4楽章を指揮

 後半は都響メンバーが青フィルに参加した合同セッションで《新世界より》第4楽章。学生指揮(2年生男子)による演奏後、大野が指揮台に上がる。「ヴィオラはフレーズの最初にアクセントを付けて」「コントラバスとチェロ、ここはトゥッティなので目立たないですが、第1テーマを弾いている皆さんが主役です。積極的に」――わずかな一言で、響きが立体的となり、音楽の表情がどんどん豊かになってゆく。

 この世界には、素晴らしいもの、美しいものがたくさん在るのだ、ということ。そんな感動と希望に満ちた体験を、生徒たちは確かに共有したのではないだろうか。


(取材・文/友部衆樹 写真/堀田力丸 『月刊都響』2018年11月号より転載)





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青フィルとの合同セッションで演奏する岡崎耕二

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演奏のコツをアドヴァイスする渡邉ゆづき

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見本演奏をする糸井裕美子

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生徒たちと演奏する清水詩織

第20回 都響マエストロ・ビジット
大野和士×都響メンバーによる特別講義
2018年9月7日(金)都立青山高等学校 5階ホール

訪問者/大野和士(音楽監督)、渡邉ゆづき(副首席ヴァイオリン奏者)、清水詩織(チェロ奏者)、糸井裕美子(クラリネット奏者)、岡崎耕二(首席トランペット奏者)
参加生徒/都立青山高等学校オーケストラ(青山フィルハーモニー管弦楽団)部員67名