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ニュース一覧 2018.01.19 up

レポート

【1/18公演リポート】大野和士指揮 メシアン《トゥーランガリラ交響曲》

端正かつ克明なタクトに導かれた「愛の世界」の成就〜
大野和士指揮 東京都交響楽団のメシアン「トゥーランガリラ交響曲」/池田卓夫(音楽ジャーナリスト)


Concert



大野和士が日本で「トゥーランガリラ」を指揮するのは1994年1月31日、オーチャードホールの東京フィルハーモニー交響楽団定期演奏会以来24年ぶり。ほぼ四半世紀前の大野も非常にシャープな音づくりで、ピントのぴったり合った報道写真のような克明さが際立っていた。今回は日本のオーケストラの驚異的な「性能」向上も得て色彩感が広がり、巨大な愛の世界を成就させた。

鮮明で真摯、むしろ端正で古典的ともいえる棒さばきの基本は変わりないが、全体の設計と見通しが格段に良くなった。最初は「辛口」と思わせながら、次第に音が熱と潤いを帯び、楽曲の深奥へと聴き手を自然に誘う手腕は円熟以外の何ものでもない。

ソリスト2人も万全だった。ピアノのヤン・ミヒールズは冒頭のソロ、ミュライユの「告別の鐘と微笑み〜オリヴィエ・メシアンの追憶に」でもう、同時代の音楽に温かな血を通わせる音楽性の持ち主であることを示した。いきなり「トゥーランガリラ」で始めるのではなく、メシアンに因んだ4分ほどの小品を休憩なしに置いたことで現在から過去、あるいは未来へと、自由な時間を往来できる音楽の窓が静かに開かれた。交響曲においても、しっとりした音色と鋭い感性の両立がピアノパートを味わい深いものにしていた。

この交響曲を日本のオーケストラのレパートリーに定着させた最大の功労者、オンドマルトノの原田節は今夜も素晴らしかった。20世紀初頭に生まれた電気楽器の不思議な響きを介し、情熱もユーモアも怒りも、すべてを描き尽くす。もちろん、都響楽員の華のあるソロの数々、自発的にアンサンブルを高めていく熱意は最大級の賞賛に値する。

私たちの世代の日本人は、大半が戦争体験者ではない。だが大野はザグレブ・フィルハーモニー管弦楽団音楽監督だった時代、クロアチアで戦争に遭遇した。メシアンは第2次世界大戦の「死」の時代が去った直後、「愛」を高らかに歌い上げる「トゥーランガリラ」を書いた。今夜の傑出した解釈には、大野なりの生死観も投影されていたはずだ。

池田卓夫(音楽ジャーナリスト)

2018年1月18日(木)19:00 東京文化会館
第847回 定期演奏会Aシリーズ

2018年1月20日(土)14:00 東京芸術劇場コンサートホール
第848回 定期演奏会Cシリーズ


指揮/大野和士
ピアノ/ヤン・ミヒールス */**
オンドマルトノ/原田 節 **

ミュライユ:告別の鐘と微笑み~オリヴィエ・メシアンの追憶に(1992)(ピアノ・ソロ) *
メシアン:トゥーランガリラ交響曲 **