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ニュース一覧 2017.10.24 up

公演情報

【インタビュー】ハンヌ・リントゥが語る《クレルヴォ交響曲》(11/8定期A)

フィンランド独立100周年を迎えた今年、都響はシベリウス初期の傑作《クレルヴォ交響曲》を第842回定期演奏会(11月8日)で披露する。1974年、渡邉暁雄音楽監督(当時)の指揮で都響が日本初演を果たした声楽付きの大作だ。今回の指揮を執るハンヌ・リントゥはフィンランドの中堅世代を代表するマエストロ。シベリウスへの思いを聞いた。

Hannu Lintu
©Veikko Kähkönen




民族叙事詩『カレワラ』の世界

「英雄の地」を意味する『カレワラ』は、19世紀に編纂されたフィンランドの民族叙事詩。フィンランドの人々の文化や言語に対する意識を高め、ロシアの圧政に対する独立運動の精神的支柱となった。シベリウスは『カレワラ』を題材とした作品を数多く作曲したが、《クレルヴォ交響曲》はその第1作と言える。シベリウスを語るうえで欠かせない存在だ。

「『カレワラ』の概念はあらゆる文化で共通と言えるでしょう。天地創造、神々と人間との戦い、そして神々がこの世を去るとき――。『カレワラ』が他の国のサガ(神話)と異なるのは、文献ではなく歌で伝えられたという点で、独自の詩的なリズムがあります」

普遍的なテーマを持つ『カレワラ』だが、《クレルヴォ》には特にフィンランド的な特徴があるという。

「それは、英雄が際限のない惨事に遭遇したときに、どうすることもできなかったというストーリーに示されているでしょう。《クレルヴォ》は今日でも世界で起きている暴力や非行の象徴とも言えます。神の行為は永遠に私たちとともにあるのです」

シベリウスを魅了したフィンランド語の響き

「シベリウスは《クレルヴォ》を〈交響曲〉と称していません。この作品はシベリウスの他の交響曲の様式と同様には捉えにくく、幻想、青春、悲劇が壮大に表現されており、若い時期の作曲であることが魅力となっています」

シベリウスはフィンランド人ながらスウェーデン語を母語とする家庭で育ったため、作曲当時の1891~92年頃はフィンランド語が堪能でなかったという。

「シベリウスはフィンランド神話に初めて出会い、フィンランド語のリズムに魅了されました。《クレルヴォ》はフィンランド語特有の要素があるため、フィンランド人の歌手で演奏されるべきと思います。詩に秘められているリズムや美しさを正しく感じ取れなければ、エモーショナルな芸術的効果が失われてしまうのです。今回共演する2人の歌手はこれをよく理解していますし、ポリテク合唱団とは数多く共演していますが、芸術的レベルが大変高く、この合唱団を東京に紹介できることを誇りに思います」

歌声のもたらす希望と人間性

Hannu Lintu
©Kaapo Kamu

すばらしいフィンランドの歌手たちとの共演の機会に、さらにうれしい知らせが。《クレルヴォ交響曲》のアンコールとして、シベリウスの交響詩《フィンランディア》を合唱付きで演奏するという。歌詞には、ロシアの支配で危機に瀕していたフィンランドの人々の決意に満ちた熱い魂が込められている。プロムナードコンサートNo.343(2011年4月24日)では、《フィンランディア》をリントゥの指揮で演奏、直前に発生した東日本大震災で傷ついた心を励ますような演奏が大きな感動を呼んだ。

「《フィンランディア》は当初から歌の付いた作品として作曲されたのではありません。フィンランドの詩人コスケンニエミが歌詞をつけ、シベリウス自身もこの作品を新興国家が戦争の惨禍から立ち直る象徴と理解し、今では歌付きの版も親しまれています。とても美しい歌詞ですが、歌詞がなくても同等に力強いと思います。《フィンランディア》は様々な文化を持つ人々に語りかけ、いかなる言語を持つ人々にも希望をもたらします。人の声はそこに独自の人間性を添えるのです」

2017年11月8日(水)19:00 東京文化会館
第842回 定期演奏会Aシリーズ

指揮/ハンヌ・リントゥ
メゾソプラノ/ニーナ・ケイテル
バリトン/トゥオマス・プルシオ
男声合唱/フィンランド ・ポリテク男声合唱団
合唱指揮/サーラ・アイッタクンプ

━フィンランド独立100周年━
シベリウス:クレルヴォ交響曲 op.7

【アンコール(予定)】
シベリウス:交響詩《フィンランディア》 op.26(男声合唱付き)